円安は資産運用にどう影響する?円安の時に検討するべきこと

 

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2022年に入り、ドル円相場はおよそ32年ぶりの円安水準となりました。

物価変動なども加味した実質実効円レートは、実に半世紀ぶりの低い水準となっています。

このような円安の状況は、私たち国民にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

ここでは、円安とはどういう状態なのか基本をおさらいしつつ、資産運用への影響や円安時において検討すべきことを解説します。

1.円安はどういう状態?円高との違いをおさらい

日本円と円以外の通貨を比べたとき、日本円の価値が下がることを「円安」といい、反対に日本円の価値が上がることを「円高」といいます。

以下のように、基本的には通貨の需要に応じて円安・円高が起こります。

  • 円安になる=日本円を保有したい人(円の需要)が減っている
  • 円高になる=日本円を保有したい人(円の需要)が増えている

各通貨の需要が変わる要因は多岐にわたりますが、主な原因として挙げられるのは以下です。

  • 金利差
  • 経済指標
  • 社会情勢

それぞれ、どういった作用が働くのか解説します。

1-1.金利差は円安・円高とどう関係する?

基本的には「高金利な通貨」は需要が高まり、交換対象となる傾向にあります。

たとえば、米ドルが日本円よりも好条件な金利設定であれば、日本円を保有している人はより多くの財産を米ドルに交換する動きが起こるのです。

この場合には円安が起こります。

一方、日本円が米ドルよりも好条件な金利設定であれば、先ほどとは逆の動きが起こり円高となります。

1-2.経済指標は円安・円高とどう関係する?

主要国が公表する経済指標は、為替相場を変動させる要因の1つです。

たとえば、アメリカの雇用統計が「アメリカの雇用状況が向上している」と示し、それが事前の予想を超える良い内容であれば、アメリカ経済の拡大に対する期待度が上がり米ドルの需要が高まります。

その結果、一般的には米ドルが買われて、円安が起こる傾向にあるのです。

なんらかの理由により、仮に今後の日本経済への期待感が強まった場合には、日本円の需要が高まり、円高が起こる可能性が高まります。

1-3.社会情勢は円安・円高とどう関係する?

戦争や政変(クーデターなど)が発生した場合、リスク回避のためにその国の通貨が売られて通貨安が起こります。

通貨を売る動機となるリスクは複数ありますが、2022年にロシアが金融制裁を受けてルーブルが通貨安となったことは記憶に新しいところです。

また戦争などの有事の際には、比較的信用の高い通貨に換金されるケースがあり、有事に米ドルや日本円が買われることをそれぞれ「有事のドル買い」「有事の円買い」といいます。

ただし、2022年に起こったロシアによるウクライナ侵攻に際して、当初予想されていた円買いは起こらず円安をたどる一方でした。

社会情勢の混乱時には「有事の円買い」が起こり、円高になるという通説がありましたが、その限りではないことに注意が必要です。

2.円安時のメリット・デメリット

円安時の主なメリット・デメリットはそれぞれ以下の通りです。

円安時のメリット 円安時のデメリット
運用している海外資産の価値が上がる
日本経済を支える輸出産業が潤う
輸入に頼っている分野の商品が高騰する
日本円で保有する資産が目減りする

メリットから順番に、それぞれ円安時の特徴を解説します。

円安時のメリット1:運用している海外資産の価値が上がる

円安時には日本円の価値が下がるため、外貨や外貨で配当が行われる海外株式などの資産は、相対的に価値が上がります。

そのため、あらかじめ日本円を外貨に交換していたり、海外株式を購入していたりする場合、その領域に関していえば円安は有利に働きます。

ただし日本に住んでいる以上、財産のほぼすべてを外貨などに交換することはないため、海外資産の価値が上がるメリットは「資産全体の目減りを抑える」程度の働きしか期待できません。

円安時のメリット2:日本経済を支える輸出産業が潤う

日本は貿易大国と呼ばれるほど、世界でも多くの輸出入を行っている国です。

輸出総額は2020年時点で約68兆円にのぼり、その上位を自動車産業が占めています。

円安時はより安い価格で国外に製品を販売できるため、自動車を始めとするあらゆる輸出品が売れやすくなり、結果として日本企業が海外から稼ぎだす金額は上がるため、円安は日本経済にポジティブな影響をもたらす側面があります。

ただし2022年時点での円安は、円安時のメリットが生じづらい状況を作りました。

というのも輸出産業の競争力向上につながる円安水準を超え、これ以上のプラス効果を期待できない状況となったのです。

にもかかわらず行き過ぎた円安により原油などの価格が上がり、輸出品の原材料調達にかかるコスト増加の傾向が見られるため、2022年の円安は「輸出産業に大きな好影響をもたらさない円安」になっているといえます。

円安時のデメリット1:輸入に頼っている分野の商品が高騰する

円安時には、日本が輸入に頼っているあらゆる商品が高騰します。

農作物や海外製の製品、エネルギーなどがその一例です。

エネルギー価格が割高になれば商品を製造する費用も膨れ上がり、連鎖的にあらゆる商品が値上がりします。

日用品が高騰するなか、基本的には収入が従来と変わらないため、円安が顕著になるほど家計の負担は大きくなる一方です。

円安時のデメリット2:日本円で保有する資産が目減りする

資産の一部を外貨などに換えていれば資産の目減りを抑えられますが、財産のほとんどを日本円のみで保有している場合には、円安が進むほど資産は目減りする一方です。

3.円高時のメリット・デメリット

円高時の主なメリット・デメリットはそれぞれ以下の通りです。

円高時のメリット 円高時のデメリット
輸入に頼っている分野の商品が安くなる
海外旅行の費用が安くなる
保有する海外資産の価値が目減りする
不況の可能性が高まる

メリットから順番に、それぞれ円高時の特徴を解説します。

円高時のメリット1:輸入に頼っている分野の商品が安くなる

円安時には、日本が輸入に頼る農作物やエネルギーが安く手に入るため、日用品の価格が下がります。

海外雑貨や海外ブランド製品など、国外から取り寄せた製品も値下がりするため、消費者目線でいえば円高は「生活しやすい状況」ともいえるでしょう。

円高時のメリット2:海外旅行の費用が安くなる

円高時にはより少額な日本円で、より多くの外貨と両替ができます。たとえば、もともと1ドル100円だったところ、円高により1ドル80円になれば、1ドルを手に入れるために必要な日本円が20円少なくて済むのです。

この特性を利用して円高時に日本円を外貨へ換えて海外旅行に行けば、現地で使う外貨の金額は変わらないものの、実質的な日本円の負担額を減らしつつモノやサービスを購入できます。

円高時のデメリット1:保有する海外資産の価値が目減りする

外貨・海外株式に換えて保有している財産は、円高時には実質的に価値が目減りします。

つまり「日本円で持っておいた方が価値が高かった」という状態になるのです。

ただし、円安時は日本円よりも外貨・海外株式での資産運用にメリットがあるため、一概にどの状態での資産運用が正解とはいえません。

円高時のデメリット2:不況の可能性が高まる

日用品や海外旅行が安くなるなど、円高は個人消費者にとって短期的にメリットをもたらしますが、円高時はデフレを招く可能性があります。

円高になれば日本の輸出品は高くなり、海外で売れづらくなります。

海外企業は高額な日本製品を輸入する理由がなくなるため、日本企業の国際競争力は下がり輸出産業の業績は落ちるのです。

前述の通り日本は輸出大国でもあるため、輸出産業の業績低下が国内経済の悪化を招き、不況の可能性を高めるシナリオが想定されます。

4.円安のときに検討するべきこと

円安が続いた場合、日本円で保有している財産は目減りする一方です。

そのため円安傾向が見えたときには、保有する財産のうち「日本円以外の資産」が占める割合を増やすことが重要となります。

ただし、円安の傾向が見えるからといって、財産のほとんどを外貨に換えることは推奨しません。

そのような行為は「財産の大半を日本円で持っている状態」と同様、ハイリスクだからです。

そのため、円安と円高のどちらに傾いても損失が過剰に膨れないよう、財産は日本円と外貨に程よく分散する意識が求められます。

そして2022年現在、およそ20年ぶりの円安水準となっている状況は、保有財産における日本円と外貨のバランスを見直す貴重な機会だといえます。

5.投資初心者が始めやすい円安対策とは?

円安が有利に働くのは「外貨を保有している」や「海外株式を保有している」など、財産を日本円や国内株式以外で保有している場合です。

そのため、円安への対策となる投資を考えるのであれば、必然的に海外へ目を向けた資産運用となるのです。

ただし、ひと昔前まであった「海外投資はハードルが高い」という考え方は、いまでは薄れつつあります。投資初心者であっても取り組みやすい選択肢が増えたからです。

ここでは、投資初心者でも手軽に始められる円安対策として、2つの選択肢をご紹介します。

5-1.外貨預金

外貨預金とは、日本円ではなく海外の通貨を預金することです。

たとえば、資産の一部を米ドルに換えて預金しておけば、円安ドル高の際に目減りした日本円の資産価値を米ドルの上昇が補います。

そのため円高時に日本円を米ドルに換えておくことで、円安時になった際のリスクヘッジとして機能するのです。

また預金先として日本円よりも金利の高い通貨を選べば、利息分の利益獲得も期待できます。

ただし、仮に預金後に円高が続けば日本円の価値が高くなるため、円高になれば保有する外貨の価値が目減りすることにはご留意ください。

外貨預金を実践した経験がない場合、外貨預金というのはハードルが高い手法に思えますが、ネット銀行を通じてパソコンやスマホアプリから日本円を簡単に外貨に交換できます。

5-2.外国株式・外国債券を対象とする投資信託

円安による資産価値の目減りを対策し、かつ投資による利益獲得を目標とする場合には、外国を対象とした投資信託の運用が候補に挙がります。

この際、たとえばアメリカの株式・債券を対象とした投資信託を購入するために、必ずしも米ドルが必要となるわけではありません。

選んだ投資信託が「海外の資産に投資する」という主旨で運用されるものなら、その投資信託を購入する通貨は日本円でも外貨でも問題ないのです。

全世界を対象とした投資信託を購入した場合には、その投資に投じた資金が日本円であっても、実質的には日本円以外の資産(複数国の資産)を運用している状態になるのです。

現在ではどのネット証券でも、外国株式・外国債券を対象とした投資信託を手軽に購入できるため、外貨預金と並んで手軽に始められる円安対策の1つに挙げられます。

この際には、以下の記事で紹介しているつみたてNISAを活用することで、運用利益にかかる税金を免除できます。

6.まとめ

2022年、日本はおよそ32年ぶりの円安水準に突入しました。

今後も円安傾向が続けば日本円の価値はさらに下がるため、資産を日本円だけで運用する状態はリスクがあるといえます。

これを機に資産状況を確認し、日本円で保有する資産と円以外で保有する資産のバランスを見直してみてください


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