地方公務員・国家公務員の退職金はいくら?平均支給額をケース別に解説

 

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公務員の退職金が少しずつ減額されていることをご存知でしょうか?

現状、公務員は民間企業よりも安定した収入が保証されていますが、だからといって老後設計をまったく考えなくて良いわけではありません。

人生100年時代といわれるいま、定年退職時にどのくらいの退職金を受け取れるのか把握し、老後から逆算した人生プランの重要性は高まっています。

ここでは地方公務員と国家公務員における退職金の平均支給額、推移を中心にご説明します。

1.地方公務員の退職金

地方公務員の退職金は職種によってやや違いがあるものの、60歳で定年退職した者の支給額は2,200万円前後となっています。

以下は総務省が公開する「給与・定員等の調査結果等」をもとに、全国の地方公務員における退職手当の「60歳定年退職者の平均支給額」を割り出したものです。 データはいずれも、令和2年の数値です。

職種 平均支給額(1万円以下は切り捨て)
全職種 2,211万円
一般職員 2,160万円
一般職員のうち一般行政職 2,164万円
教育公務員 2,236万円
警察職 2,155万円

参考:総務省「給与・定員等の調査結果等」をもとに作成

1-1.直近5年分の退職金推移

さらに、令和2年の平均支給額を含む、直近5年分の推移を計算しました。

つぎの数値は地方公務員の全職種における「60歳定年退職者の平均支給額」を算出したものです。

参照年度 平均支給額(1万円以下は切り捨て)
令和2年(2020年) 2,211万円
令和元年(2019年) 2,213万円
平成30年(2018年) 2,218万円
平成29年(2017年) 2,296万円
平成28年(2016年) 2,295万円

参考:総務省「給与・定員等の調査結果等」(平成28年から令和2年)をもとに作成

上記から地方公務員の退職金は緩やかに減額されていることが読み取れます。

表には含まれていませんが、以前から平均支給額は下降傾向にあったため、中期的な下降が続いていると捉えて良いでしょう。

1-2.ケース別の退職金平均支給額

前述の退職金平均支給額は、定年退職時における退職金の平均支給額です。

定年退職の場合には平均支給額が2,200万円前後である一方、それ以外のケースでは退職金の平均支給額に大きな開きがあります。

そこで総務省が公開する「平成31年 地方公務員給与の実態」をもとに、年齢別に「自己都合」および「勧奨」による1人あたりの退職金を算出しました。

年齢 自己都合 11年未満の勧奨 11~25年未満の勧奨 25年以上の勧奨
20歳未満 9万円
20歳~24歳 16万円 89万円
25歳~29歳 30万円 62万円
30歳~34歳 57万円 148万円 325万円
35歳~39歳 115万円 226万円 610万円
40歳~44歳 212万円 327万円 873万円 1,466万円
45歳~49歳 309万円 239万円 1,466万円 1,821万円
50歳~51歳 315万円 453万円 1,366万円 1,966万円
52歳~53歳 364万円 589万円 1,310万円 2,075万円
54歳 409万円 307万円 1,363万円 2,124万円
55歳 437万円 844万円 1,448万円 2,149万円
56歳 553万円 1,486万円 1,375万円 2,190万円
57歳 595万円 1,193万円 1,288万円 2,205万円
58歳 732万円 1,156万円 1,340万円 2,208万円
59歳 864万円 1,568万円 1,432万円 2,192万円
60歳 300万円 1,040万円 1,943万円 2,425万円
61歳~64歳 61万円 1,342万円 1,446万円 2,190万円
65歳以上 23万円 3,206万円

参考:総務省「平成31年 地方公務員給与の実態」をもとに作成

基本的には年齢が上がり、勧奨による退職までの勤務期間が長いほど、退職金の平均支給額は増える傾向にあります。

各ケースにおける平均支給額の参考材料としてご活用ください。

2.国家公務員の退職金

令和元年における国家公務員の退職金は、平均支給額が2,100万円前後となっています。

以下は内閣官房が公開する「退職手当の支給状況」をもとに作成した、国家公務員が定年退職した場合における退職金の平均支給額です。

先ほどの地方公務員の数値が令和2年分であることに対し、こちらの国家公務員における平均支給額は令和元年時点のものである点に留意してください。

職種 平均支給額(1万円以下は切り捨て)
常勤職員 2,090万円
うち行政職俸給表(一)適用者 2,140万円

参考:内閣官房「退職手当の支給状況」をもとに作成

上記のうち行政職俸給表(一)は、主に一般行政事務職員を指します。

2-1.直近5年分の退職金推移

地方公務員と同様に、国家公務員の退職金についても令和元年を含む、直近5年分の平均支給額をまとめました。

それぞれ1万円以下は切り捨てて記載しています。

参照年度 常勤職員 うち行政職俸給表(一)適用者
令和元年(2019年) 2,090万円 2,140万円
平成30年(2018年) 2,068万円 2,152万円
平成29年(2017年) 2,108万円 2,149万円
平成28年(2016年) 2,167万円 2,223万円
平成27年(2015年) 2,181万円 2,239万円

参照:内閣官房「退職手当の支給状況」(平成27年から令和元年)をもとに作成

こちらも全体的には下降傾向にあります。

2-2.ケース別の退職金平均支給額

先ほどの退職金平均支給額は、定年退職時における退職金の平均支給額でした。

定年退職の場合には平均支給額が2,100万円前後である一方、それ以外のケースでは退職金の平均支給額に大きな開きがあります。

地方公務員とは違った形式のデータとなるため、定年退職以外の平均支給額を「勤続年数」と「年齢」に分けた、常勤職員の退職金をご紹介します。

勤続年数 応募認定 自己都合 その他
5年未満 228万円 23万円 99万円
5年~9年 737万円 87万円 263万円
10年~14年 819万円 264万円 474万円
15年~19年 1,233万円 504万円 841万円
20年~24年 1,748万円 918万円 1,134万円
25年~29年 2,101万円 1,347万円 1,586万円
30年~34年 2,774万円 1,695万円 2,580万円
35年~39年 2,741万円 1,998万円 3,741万円
40年以上 2,419万円 2,119万円 3,739万円

参照:内閣官房「退職手当の支給状況」をもとに作成

おおむね予想通りとは思いますが、勤続年数に比例して退職金の平均支給額は高額になり、自己都合の退職よりも応募認定による退職(早期退職)が受取額の面で上回ります。

今後もこの通りに退職金が支給されるとは限りませんが、おおよその目安にできると考えられます。

続いて、以下は各年齢における退職金の平均支給額です。

年齢 応募認定 自己都合 その他
20歳未満 9万円 16万円
20歳~24歳 24万円 103万円
25歳~29歳 52万円 117万円
30歳~34歳 141万円 106万円
35歳~39歳 287万円 126万円
40歳~44歳 552万円 191万円
45歳~49歳 1,805万円 1,007万円 344万円
50歳~54歳 2,151万円 1,367万円 702万円
55歳~59歳 2,667万円 1,660万円 1,405万円
60歳以上 4,439万円 645万円 1,403万円

参照:内閣官房「退職手当の支給状況」をもとに作成

基本的には年齢が上がるほど平均支給額は増え、応募認定による退職がもっとも退職金が多いケースとなっています。

ただ、年齢が上がるほど勤続年数が長いケースは増えてくるものと思われるため、一概に「高年齢であるほど退職金は多い」とはいえない点に留意が必要です。

3.公務員の退職金は今後どうなる?

直近の推移をもとにすると、公務員の退職金は下降傾向であることが読み取れます。

過去データにもとづいて今後を予測するなら、引き続き平均支給額は減少すると予想できるため、退職までの期間が長いほど「実際の支給額は本記事のデータを下回る」と見込んだ方が良いでしょう。

また退職金の支給額に不安が残る以上、比較的安定して給与を受け取れる公務員であっても、現役期間の預貯金だけで老後を迎えるのは不安です。

そのため、会社員に資産運用が必要だといわれるように、今後は公務員にも資産運用が必要だと考えられます。

4.退職後の老後資金を準備するには

退職後の老後資金を準備するにあたり、当メディアが提示している選択肢は大きく4つです。

  • 共済貯金
  • iDeCo
  • 不動産投資(不動産ファンド)
  • 太陽光発電投資(太陽光発電ファンド)

それぞれ、どのような点で公務員の資産運用に適しているのか解説します。

4-1.共済貯金

民間企業の場合、従業員の給与を天引きして会社が管理する「社内預金」という制度があります。

共済貯金とは、いわば地方公務員が使える社内預金のことです。

共済貯金は各都道府県の共済組合が運営しており、預入先によっては利率が1%を超えるケースもあります。

1,000円単位での積み立てが可能となっており、預入金は国債や地方債といった安定した投資先で運用されるため、資産運用としてはローリスクな選択です。

ただし、銀行預金には適用される元本保証の制度「ペイオフ」は、共済貯金の場合は適用されないことに留意しなければなりません。

万が一、共済貯金の運用元である共済組合が破綻した際は、積み立てたお金が戻ってこない可能性がある点はデメリットだといえるでしょう。

4-2.iDeCo

iDeCo(イデコ)は私的年金の一種。

60歳まで拠出(年金・保険の掛金を払いこむこと)した掛金を運用し、運用による利益と掛金を60歳以降に引き出すことのできる拠出型年金です。

国民年金や厚生年金などの「徴収されて運用される年金」とは異なり、iDeCoは「自分で運用できる年金」といえます。

iDeCoにはいくつかメリットがありますが、とくに大きな利点として働く特徴は以下の2つです。

  • 掛金が課税所得額から控除される
  • 受け取る際にも所得控除を受けられる

掛金を払いこむ際に控除を受けられ、さらに掛金と運用益を受け取るときにも控除を受けられるため、老後の準備をしつつ節税効果を得られます。

4-3.不動産投資(不動産ファンド)

不動産投資は、人々の衣食住と密接に関係する、流行に左右されづらい資産運用の1つです。

ただし公務員の場合、以下のような事業的規模の規制が存在する点に注意しなければなりません。

  • 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟未満
  • 独立家屋以外の建物の賃貸については10室未満
  • 年間賃貸収入が500万円未満

人事院規則により、許可なく上記を超えて不動産投資を行うことを制限されているのです。

また、自治体によってはより厳格な規則が設けられている場合もあるため、資産運用として不動産投資を検討する際には確認しておいてください。

なお直接不動産を運用するのではなく、間接的に不動産へ投資できる不動産ファンドを運用することで、課せられた制限の影響を受けることなく不動産に投資できます。

4-4.太陽光発電投資(太陽光発電ファンド)

太陽光発電投資は政府により普及が推進されている太陽光発電を事業として行い、投資費用を上回るリターンの獲得を狙う資産運用です。

入居率に収益が左右される不動産投資とは異なり、太陽光発電投資は設備への日射量と買取制度が収益の要であるため、比較的安定した収入を得られます。

ただし公務員の場合、投資に適した10kW以上の太陽光発電設備を運用すると「事業」と判断されてしまい、自営業の扱いとなるため小型の設備しか運用できません。

そのため、資産を増やすための運用を目指すのであれば、間接的に太陽光発電事業に携われる「太陽光発電ファンド」をおすすめします。

太陽光発電ファンドであれば自ら発電設備を持つ必要はなく、公務員特有の制約を気にすることなく資産を運用できます。

5.まとめ

公務員の退職金は下降傾向にあるため、ゆとりある老後生活を目指して準備するなら、現役時代から資産運用を行った方が良いと判断できます。

ぜひ本記事に記載した退職金の平均支給額をもとに、どのような方法で資産運用を進めれば良いのか検討してみてください。


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