不動産投資に必要な確定申告とは?必要書類や申告方法を解説

 

この記事の目次

不動産投資では、サラリーマンであっても確定申告を行うことが一般的です。

不動産投資の確定申告では不動産からの家賃収入のほか、経費についてもそのつど帳簿を作成することが前提となっています。

また、節税効果が期待できる青色申告を選択する場合には、事前に税務署から承認を受ける手続きなども必要です。

不動産投資家が行うべき確定申告の手続きは複雑であり、はじめて確定申告をする投資家にとってはわかりにくい部分も多いでしょう。

そこで、不動産投資において必要となる確定申告の手続きや用意すべき書類について詳細に解説します。

なお、以下の解説は令和2年4月1日時点の税制に基づくものです。

税制については頻繁な改正があるため、実際に制度の利用を検討する際には最新情報をご確認ください。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • 不動産投資の収支が赤字でも確定申告をした方がよい場合がある
  • 確定申告のため、不動産投資の収入や支出に関する書類は残しておく
  • 青色申告の場合、事前の青色申告承認申請と複式簿記による帳簿作成が必要

1.不動産投資に確定申告が必要か?

1-1.確定申告とは

確定申告とは、1年間の所得及び税額を納税者自身が計算して、税務署に申告する手続きをいいます。

もっとも、会社員など収入が給与所得だけの場合、勤務先の会社が源泉徴収や年末調整によって納税手続きを代わりに行うことが通常です。

このため会社員の場合、医療費控除などの申告によって税金の還付を受けるようなケースでない限り、確定申告をする機会はあまりないでしょう。

1-2.不動産投資で確定申告が必要となるケース

不動産投資をしている場合、会社員でも給与所得以外に20万円以上の所得があれば確定申告が必要です。

不動産投資による収入が「不動産所得」に区分される場合、所得額は以下の計算式で算出されます。

ここでのポイントは、家賃などの収入額の全額がそのまま所得額になるわけではない点です。

ポイント不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費

なお、不動産投資による所得が20万円以下でも、確定申告をしなければ住民税の申告が別途必要です。

手間がそれほど変わらないため、給与所得以外の所得が20万円以下でも、実際には確定申告をすることが多いと考えられます。

サラリーマン大家などの不動産所得とは別に給与所得がある人で、不動産投資で赤字が発生する場合、赤字分を給与所得と損益通算することで給与所得の節税となることがあります。

損益通算の適用を受けたい場合には、赤字であっても確定申告が必要です。

これに対し、専業の不動産投資家は、所得税が発生する場合に確定申告を行わなければなりません。

結論としては不動産投資を行っている人のほとんど全員が確定申告をしているのが実情です。

なお、確定申告をしないと無申告加算税や延滞税などのペナルティがあります。

自分が確定申告をする義務があるか正確に判断することが必要です。

1-3.不動産投資における所得の種類

家賃収入のように不動産の貸し付けによる所得は基本的に「不動産所得」です。

不動産所得に関しては、不動産の貸し付けが事業として行われているかどうかによって、所得金額の計算上の取り扱いが異なります。

事業としてか否かについては、社会通念上「事業」と称するに至る程度の規模で行われているかによって実質的に判断されます。

もっとも、マンションやアパートなどの建物の貸し付けに関して、以下の基準にあてはまる場合は原則として「事業」としての扱いです。

  • 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること
  • 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

出典:国税庁HP タックスアンサーNo.1373「事業としての不動産貸付けとの区分」を参考に作成

なお、賄い付きの下宿などのように不動産の貸し付けと人的役務の提供とが一体となっている事業については、不動産所得ではなく「事業所得」になると考えられています。

このうち、事業に至らない規模のものは「雑所得」になることがあります。

雑所得に区分されると、給与所得などとの損益通算ができません。

2.不動産投資家の確定申告の手順

実際に確定申告をする場合は収入や経費に関する書類を用意し、これらの書類に基づいて確定申告書などを作成して税務署に提出します。

2-1.不動産投資の確定申告に必要となる書類

まずは収入や経費に関する書類を用意する必要があります。

収入に関する書類

不動産投資において収入に関する代表的な書類と入手方法は以下のとおりです。

なお、確定申告は納税者が年度内に得たすべての収入が対象となります。

不動産投資以外の収入がある場合には、他の収入に関する書類も用意する必要があります。

必要書類 入手方法
不動産売買契約書 不動産の取得時or売却時に作成
不動産賃貸借契約書 入居者との契約時に作成
家賃などの送金明細書 不動産管理会社などから月次で受領or 預貯金の入出金履歴
売り渡し清算書 売買した不動産の引き渡し時に受領
源泉徴収票(給与収入などがある場合) 勤務先などから年末に受領
不動産売買契約書

不動産売買契約書は、確定申告の対象となる年度内に不動産の取得又は売却をした場合に用意すべき書類です。

不動産の売却により利益が発生していれば「譲渡所得」として課税対象となります。

不動産の譲渡所得は他の所得と区分して計算する分離課税です。

譲渡所得は、不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合には長期譲渡所得、5年以下の場合には短期譲渡所得となり、それぞれ適用される税率が異なっています。

不動産賃貸借契約書

不動産賃貸借契約書は投資物件の入居者との間で締結する契約書です。

契約締結時に作成するもので、毎月の賃料のほか敷金や礼金など収入に関わる情報が記載されています。

賃貸借契約の締結を不動産管理会社などに委託している場合、委託先から契約書を入手します。

家賃などの送金明細書

送金明細書は家賃の回収を不動産管理会社などに委託している場合に管理会社から毎月送られてくるものです。

送金明細書には、賃貸借契約に基づく入居者からの実際の入金実績が記載されています。

不動産管理会社などに家賃の回収を委託していない場合、家賃振込先に指定した預貯金口座の入出金履歴が送金明細書の代わりとなります。

売渡精算書

売渡精算書とは、不動産を取得する際にかかった費用に関する明細書をいいます。

不動産の売買契約の際に不動産会社などからもらいます。

源泉徴収票

サラリーマン大家の場合には、不動産投資による収入以外に給与収入に関しても確定申告書に記入する必要があります。

このため、給与収入の金額を裏付ける書類として、勤務先から受け取った源泉徴収票を用意しておきましょう。

経費に関する書類

不動産投資の経費に関する代表的な書類と入手方法は以下の表のとおりです。

経費に漏れがあると必要以上に税金を支払うことになりかねません。

経費の支出が発生するごとに書類を整理し保管しておくことが重要です。

必要書類 入手方法
ローンの返済予定表 融資後に金融機関などから受領
不動産取得税・固定資産税の納税通知書 国や地用公共団体から受領
管理費・修繕積立金などの領収書 管理会社などから受領
損害保険料の保険証券 保険契約時に保険会社から受領
ローンの返済予定表

不動産投資で物件を取得する際には、不動産投資用のローンを組むことが一般的に行われています。

ローンの返済額のうち、元本に充当される部分は経費になりませんが、利息については経費として計上できます。

そこで、1年間に支払った利息額を示す資料として、融資を受けた金融機関などから受領するローンの返済予定表を用意が必要です。

不動産取得税・固定資産税の納税通知書

不動産投資において支払う税金のうち、不動産取得税や固定資産税及び都市計画税は経費とすることができます。

不動産取得税とは土地や建物を売買などにより取得したときに、取得した側(買主)に課税される地方税です。

また、固定資産税は毎年1月1日時点で不動産を所有する者に課される地方税であり、都市計画税は市街化区域内にある不動産の所有者に課される地方税です。

管理費・修繕積立金などの領収書

不動産投資家が区分マンションの一室を所有しているケースでは、投資家自身が支払っている投資用マンションの管理費や修繕積立金も経費として計上できます。

修繕積立金は原則、実際に修繕工事が行われたときに経費になりますが、例外として一定の要件を満たすときは支払期日の属する年分の必要経費に算入できるのです。

マンションの管理を管理会社に委託している場合、管理会社から管理費などの領収書を受領します。

損害保険料の保険証券

不動産投資の対象となる物件に火災保険や地震保険などを掛けている場合、保険料を経費として計上できます。

保険料の支払いを裏付ける資料として、保険会社から受け取った保険証券や保険料の領収書を用意します。

2-2.不動産投資の確定申告書の作成方法

不動産投資の確定申告書を作成するために必要な手続きや書式などについて、以下で説明します。

不動産投資の確定申告の種類

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類の方法があります。

青色申告では「複式簿記」という複雑な方式による帳簿作成が必要ですが、白色申告では売上と経費は項目ごとの単純な一覧化でよいため、白色申告の方が経理作業の負担は少ないです。

青色申告を選択すれば最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。

このため、所得額が大きい場合に青色申告を選択することで節税効果を期待できます。

ただし、青色申告は事業としての不動産貸付けでなければなりません。

  • 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること
  • 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

出典:国税庁HP タックスアンサーNo.1373「事業としての不動産貸付けとの区分」を参考に作成

確定申告を青色申告によって行いたい場合、所得税の青色申告承認申請手続きが必要です。

具体的には、青色申告を行おうとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、不動産の貸し付けをした場合には貸付開始日から2ヶ月以内)に、「所得税の青色申告承認申請書」を管轄税務署に提出しなければなりません。

不動産投資の確定申告書については、白色申告と青色申告とで提出すべき書類が異なります。

白色申告の場合

白色申告の場合に作成が必要となるのは主に「確定申告書B」及び「収支内訳書」です。

収支内訳書には収入の内訳のほか、勘定科目毎の経費、減価償却費、修繕費、不動産の保有状況などの詳細をとりまとめて記載する必要があります。

確定申告書や収支内訳書の書式は、税務署のほか国税庁のホームページなどから入手できます。

青色申告の場合

青色申告の場合に作成が必要となるのは「確定申告書B」及び「青色申告決算書」です。

これらの書類も税務署や国税庁ホームページなどから入手できます。

青色申告決算書は「複式簿記」に基づいて作成されます。

損益計算書及び貸借対照表の作成が必要となる点が白色申告と大きく異なるところです。

3.まとめ

不動産投資をしている場合は基本的に確定申告が必要と考えておくべきです。

確定申告自体は原則として翌年3月15日までに行うものですが、確定申告の前提となる日常的な入出金についてはそのつど帳簿を作成しなければなりません。

とくに青色申告を行う場合には複式簿記を行う必要があり、簿記に関する知識も欠かせません。

これらは納税者自身が勉強しながら行うこともできますが、サラリーマン大家などのように本業があって経理作業に時間が取れない場合、税理士などに依頼する方法もあります。

いずれにしても、確定申告の直前に慌てないために、不動産投資を始めるタイミングで青色申告とするか白色申告とするか、また経理作業の方法などについて整理をしておくと安心です。


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