不動産投資は融資期間が大切|その理由とキャッシュフローへの影響について

 

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不動産投資を始める人の多くは投資用物件の購入に不動産投資ローンの利用も検討することになりますが、ローンを選ぶ際についつい金利ばかりを気にしてはいないでしょうか。

不動産投資ローンを組むうえで低金利であることも大切ですが、それ以上に融資期間に気を付ける必要があります。

融資期間の長さが月々の返済額や返済総額に影響を与えるだけでなく、将来的な出口戦略にも影響を与えるからです。

今回の記事では、不動産投資で融資期間を重視すべき理由と、それらがキャッシュフローや出口戦略に与える影響についてまとめてみました。

不動産投資で融資期間が大切な理由

不動産投資で融資期間が重視される理由として、金利を下げるよりも融資期間を延ばした方が結果として月々の返済額が抑えられることが挙げられます。

ひとつ、例を交えながら見ていきましょう。

5,000万円の融資を融資期間25年で受けた場合、金利別に見た月々の返済額は以下のようになります。

  • 金利2.5%の場合の月々の返済額:224,308円
  • 金利2%の場合の月々の返済額:211,927円

上記より、金利が0.5%異なると月々の返済額には12,381円の差が生じることがわかります。(25年間の融資期間全体で考えると総額約371万円の差となる)

その一方で、金利を変えずに融資期間を30年としてみるとどうなるでしょうか。

  • 金利2.5%の場合の月々の返済額:197,560円
  • 金利2%の場合の月々の返済額:184,809円

先ほどの融資期間が25年であった場合と比べ、金利2.5%では26,748円、金利2%では27,118円安くなります。

もちろん、できるだけ安い金利で契約を締結することも大切ですが、毎月の返済額を安くする意味では融資期間を重視したほうがよいでしょう。

また、不動産投資では長期的な運用が前提となるため、万が一空室が長引いて収入が減少した場合には、自身でローンの支払いや各種経費を負担する必要があります。

そのため、キャッシュフローの観点から長期的な融資にしたいと考える投資家も少なくありません。

住宅ローンと不動産投資ローンにおける考え方の違い

住宅ローンと不動産投資ローンを似たようなものとして捉えている方もいるかもしれませんが、両者は似て非なるものです。

住宅ローンは住宅取得を目的として金融機関から一定の融資を受け、毎月働いて得た収入の中から少しずつ返済を行います。

そのため、融資期間が短ければ短いほど、金利を含めた総支払額を低く抑えられるでしょう。

一方、不動産投資では融資を受けて購入した物件を第三者に貸し出すことにより賃料収入を得られるだけでなく、それらを返済に充てることも可能です。

そうした特性を踏まえても、不動産投資では融資期間を伸ばして月々の返済額を抑え、手元資金を増やしていく方がよいでしょう。

増えた手元資金を元手に新たな投資用物件を購入できるほか、なにかトラブルが生じた際も対策費用として充てることができます。

融資期間を決める基準とは

さて、不動産投資においては金利よりも融資期間が大切である理由についてお伝えしました。

ではいったい、金融機関はなにをもって融資期間を決めているのでしょうか。

ここでは融資期間を決める基準についてご紹介します。

躯体の構造

不動産投資ローンの利用時に融資期間の基準となるのが建物の「法定耐用年数」です。

法定耐用年数とは資産を使用できる期間を示しており、躯体の構造別に以下のように定められています。

構造または目的 法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 47年
れんが造、石造またはブロック造 38年
木造 22年
軽量鉄骨造(厚さ3ミリ以下) 19年
軽量鉄鋼造(厚さ3~4ミリ) 27年

なお、上記の期間は新築の場合を表しており、中古の物件の場合は記載の年数から築後の経過年数が引かれます。

金融機関では法定耐用年数をもとに融資期間を設定することが多く、長期の融資期間を望んでいる場合にはRC造(鉄筋コンクリート造)の物件を購入したほうが有利でしょう。

融資期間を長めに設定するメリット・デメリット

融資期間を長めに設定した場合のメリットとして、月々の返済額が下がり、手元に資金をいくらか残しておけるため、万が一のことが起きたときでも安心できる点が挙げられます。

不動産投資においては管理手数料や清掃費用、共用部の電気代といった各種費用が毎月生じます。 時には防水工事や外壁塗装といった費用負担の大きい出来事に備え、計画的に費用を貯めておかなければなりません。

そうしたことを踏まえ、手元に資金を残しておくことは非常に大切でしょう。

また、長期融資を選択することで、手持ちの資金や毎月の収入が少ない人でも不動産投資に挑戦しやすくなります。

一方、デメリットとしては返済総額が大きくなることが考えられます。

返済額が少なければ少ないだけ、借り入れた元本の返済が遅くなるため、結果として返済総額が大きくなります。

もちろん、ローンをすべて支払い終われば家賃収入が不労所得となり、安定した利益を得られますが、長期的な支払いに伴う弊害も考慮しなければなりません。

理由として、支払いが長期にわたることによって築年数も経過するため、不動産そのものの価値が減少することが挙げられます。

また、修繕をはじめとし、老朽化に伴う費用負担も必要となってくるでしょう。

月々の返済額が少ないからと甘んじることなく、計画的に手持ち資金を貯めておくことが大切です。

融資期間を短めに設定するメリット・デメリット

融資期間を短くした場合のメリットとして、期間が短いことから利息が少なく、トータルで見た返済額を大幅に抑えられることが挙げられます。

短期間で自身の純資産が増やせることから、長期的な負担を負うことに抵抗がある人や、収入が安定しない人にとっては、融資期間が短いほうが安心を得られるといえるでしょう。

また、返済が終わって担保設定が外れれば、市場のタイミングを見計らって早期に物件の売却手続きを済ませることも可能です。

そのため、家賃収入を老後の資金に充てようなどと考えていない場合には、不動産の価値が上がった段階で物件を売却することで、利益を得られるでしょう。

とはいえ、融資期間を短く設定することによるデメリットも存在します。

具体的には、売却益を出すために一定の知識や労力が求められるほか、天災などの予測不能な事態が起きた場合、購入時に想定していた売却価格よりも価値が下がる恐れがあるでしょう。

また、返済期間を短くすることで月々の返済額が大きくなり負担が増すため、資金に余裕がなければ返済が滞ってしまうかもしれません。

返済期間を長く設定したい場合はRC造がおすすめ

先にも述べたように、RC造の建物は法定耐用年数が47年と長いことから、長期にわたる融資を組めます。

そのため、長期融資によるキャッシュのストックが期待できるだけでなく、リスクヘッジにもなるでしょう。

また、RC造では出口戦略が建てやすいことも特徴のひとつです。

仮に新築の建物を20年後に売却したとすると、木造建築の耐用年数は残り僅か2年しかありませんが、RC造であればまだ27年は残っている計算になります。

次の購入者も長期融資を組める可能性が高いこともあり、RC造は木造や石造に比べて買い手がつきやすいといえるでしょう。

不動産投資を検討する際、どうしても金利ばかりに目が行きがちですが、ゆくゆくの出口戦略を立てつつ構造や返済期間も考慮することが大切です。

まとめ

不動産投資ローンを組む際に返済期間が大切な理由とそれらがキャッシュフローに与える影響について、お伝えしました。

融資期間を長くすることで月々の返済額が抑えられるほか、キャッシュのストックが可能となりますが、トータルで見た返済総額は多くなってしまいます。

融資期間については一概に長期融資がいいわけではなく、メリットやデメリットを踏まえたうえで自身の投資計画と照らし合わせて決めることが大切です。

判断に迷った際はプロの意見も仰ぎつつ、適切な判断をするようにしましょう。


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