不動産投資を始めるときに必要な勉強とは

 

この記事の目次

不動産投資には不動産取引や不動産投資用ローン、不動産取引に関わる税金についての知識が必要です。

不動産に関する最低限の知識もなく不動産投資を始めると、想定していた収益が得られず、不動産投資用ローンの返済が滞るなどのリスクがあります。

そこで、不動産投資を始める方に向けて、不動産投資の勉強方法を説明します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • 不動産投資では宅地建物取引業法や民法など、不動産取引に関わる法律を勉強しておくと安心
  • インターネット上の不動産投資に関する情報は玉石混交なため見極めが必要
  • 他の不動産投資家が登壇するセミナーや勉強会に参加すると良い情報が手に入ることも

1.不動産投資の前に「不動産」について勉強しよう

不動産投資を始める前に、投資による利回りや税務、資金繰りなどのお金の勉強をする人は多いでしょう。

たしかにお金に関する勉強は非常に重要です。

しかし、不動産投資において収益を生む主体は「不動産」です。

どのような不動産を購入するか、どの不動産業者と取引するかなどが、不動産投資の成功にかかわります。

不動産投資を始めようと考える方は、まず不動産そのものに関する勉強をするとよいでしょう。

1-1.不動産投資に関わる不動産業界を勉強

不動産投資を行うには不動産業者との付き合いが不可欠です。

不動産業界について勉強しておくと、取引などで役立つことが多いでしょう。

「不動産業界」と言っても、その事業内容にはかなりの幅があります。

不動産投資で関係する主な不動産業者は、不動産仲介会社や不動産管理会社です。

不動産ファンドやJ-REITなどに投資をする場合、ファンドの運用会社なども不動産投資に関係する不動産業者になります。

不動産仲介会社 不動産取引の際に当事者を仲介する業者
不動産管理会社 賃貸物件の契約業務、管理業務、入居者対応などを行う業者
ファンド運用会社 不動産ファンドの運用を投資家に代わって行う業者

不動産投資では最初に不動産を購入することになります。

不動産仲介の仕組みや取引の流れ、仲介手数料の計算方法などを知っておくと有用です。

また、不動産仲介業者をはじめとする不動産業者に適用される法律として「宅地建物取引業法(宅建業法)」があります。

宅建業法は、不動産取引の当事者を保護するために不動産業者に対して一定のルールを課す法律です。

宅建業法上のルールを理解しておくと、ルール違反を犯すような悪徳業者を見分けやすくなります。

1-2.不動産投資に必要な不動産売買の勉強

不動産投資の際には不動産売買に関する知識も大切です。

不動産投資では、入口と出口で必ず不動産売買の取引が発生します。

不動産投資家は不動産の買い手と売り手の両方の立場となることを前提とした勉強をしておくことが大切です。

不動産売買に関するルールの大部分は民法に定められています。

例えば、売主が一つの物件について複数の買主との間で売買契約をする「二重譲渡」といわれる事例があります。

一般的な感覚だと、一方の買主との契約しか履行できない二重譲渡契約は無効だと考えるかもしれません。しかし、民法上は二重譲渡契約であっても、契約自体は有効であるとされています。

また、必ずしも先に売買契約を締結した買主が不動産の所有権を取得できるわけではありません。

民法上は契約の先後にかかわらず、所有権移転登記を先に備えた人が不動産を実際に手に入れられる、というルールが定められています。

不動産売買において所有権移転登記が重要とされるのは、このような民法上のルールに基づくものです。

このため実務上、不動産の売買代金の支払いは不動産の所有権移転登記の申請と同時に行います。

「登記申請はただの手続きだから後でやろう」というのは不動産売買においてはご法度です。

不動産登記ひとつとっても、その背景にある民法上のルールを知っているかそうでないかによって、リスクを回避できるかどうかが左右されます。

民法をはじめとする、不動産売買にかかわる基本的なルールの勉強は重要です。

1-3.不動産投資での賃貸借に関する勉強

不動産投資では基本的に保有する不動産を賃貸して、インカムゲインを得ることを目的とします。このため、不動産の賃貸借に関する知識も必要です。

不動産賃貸をする場合には民法のほか、「借地借家法」という法律が関係します。

不動産投資の対象が区分マンションである場合には「区分所有法」も勉強しておくとよいでしょう。

特にマンションの管理組合の日常的な運営や大規模修繕などの意思決定に関しては、区分所有法のルールに従って行われます。

このほか、不動産投資において賃借人とトラブルになりやすいのは退去時の敷金の返還です。

敷金の返還に関して、東京都で「賃貸住宅紛争防止条例」が施行されています。

不動産賃貸業界において有名な「東京ルール」と呼ばれるものです。

「東京ルール」では、経年劣化及び通常の使用による損耗・キズ等の修繕費は貸主が負担することを原則としています。

これと異なる特約を貸主と借主の合意により定めることも可能ではありますが、通常の原状回復義務を超えた負担を借主に課す特約は、状況次第で無効になる可能性もあります。

なお、2020年4月1日に施行された民法においても、東京ルールに類似した規定が新たに設けられたため注意が必要です。

民法 不動産賃貸、不動産売買など不動産取引全般に関わる法律
借地借家法 一定の条件を満たす不動産の賃貸について適用される特別法
区分所有法 区分マンションの権利関係や管理に関して定める法律
賃貸住宅紛争防止条例 敷金の返還ルールに関する東京都の条例

2.初心者向けの不動産投資の勉強方法

不動産投資に興味をもつ初心者が不動産投資の勉強をしたい場合、実際にどのような手段があるのか紹介します。

2-1.不動産投資の基礎はインターネットでも勉強できる

不動産投資に関してはインターネット上に多くのコラム記事や解説記事が公開されています。

初心者が不動産投資の勉強をするとき、まずはインターネットで調べることも多いでしょう。

インターネット上の情報は基本的に無料で入手でき、投資の基礎知識から最新情報までカバーしているため、不動産投資の基礎から勉強したい方にはよい方法です。

ただし、インターネット上の記事は書籍や雑誌など紙媒体の情報と異なり、情報が精査されていない企画や専門家による監修や編集作業が行われていないものが混在しています。

不動産投資に関する誤った情報がインターネット上に残っていることもあります。

インターネットで不動産投資の勉強をする場合には、Webサイトの運営会社が信頼できるか、不動産投資業界において著名なメディアであるかなどを十分に確認することが必要です。

2-2.書籍による不動産投資の勉強

インターネットの情報よりも誤った情報の混在が低いとされている書籍。

不動産投資の初心者だけでなく、中上級者にとっても書籍による不動産投資の勉強は大切です。

不動産投資に関する書籍は入門書から専門書までたくさんあります。

初心者が不動産投資の勉強を始めるのであれば、それほど分厚くないページ数の入門書などの中から自分にとって読みやすいと感じる本を購入し、不動産投資の全体像を掴むことがよいでしょう。

不動産投資の全体像を掴んだ後に自分で気になった分野を重点的に勉強していくスタイルであれば、興味をもって不動産投資の勉強が続けられます。

2-3.セミナーや勉強会による不動産投資の勉強

不動産投資に関して、初心者向けのセミナーや勉強会も頻繁に行われています。

不動産投資をするうえで望ましいのは、不動産投資家どうしの自主的なセミナーや勉強会に参加することです。

同じような悩みを抱えた不動産投資家にも会える可能性があり、インターネットや書籍からは得られにくい貴重な情報を入手することもできます。

また、不動産投資家の人脈を作ることによって継続的に最新の情報を収集することも可能となるでしょう。

これに対して、不動産投資用物件を販売している業者によるセミナーは、最終的に不動産を売ることが目的になっています。

セミナーの内容がポジショントークである可能性を念頭に置き、セミナーで聞いた情報について不動産投資家自身でも必ず妥当性を検証するべきです。

3.中上級者向けの不動産投資の勉強法

ここで不動産投資家の中上級者として想定しているのは、不動産投資用物件について具体的に購入の検討を始めた方や、実際に不動産投資用物件を購入した投資家です。

このような中上級者向けの不動産投資の勉強方法を紹介します。

3-1.不動産投資の税務についての勉強をする

不動産投資を実際に始める前後の中上級者の投資家にとって、一番重要なのが資金繰り。不動産投資で資金繰りを把握するためには、税金の知識が不可欠です。

不動産投資に関わる税金には不動産からの収益に対して課税される所得税や住民税などのほか、不動産取引自体に対する税金である不動産取得税などがあります。

不動産を所有することに対する税金である固定資産税・都市計画税もそれなりの負担となります。

不動産投資で資金繰りを計画する際、いつの時点でどのような税金の支払いが発生するのかなどを正確に把握しておくことが大切です。

不動産投資によって収益があがっていても、納税分の資金を確保しておかなければ足元をすくわれるリスクがあります。

また、不動産投資を実際に始めている中上級者にとっては、税務上「経費」とできるのはどのような費用かも、ある程度理解しておいたほうがよいでしょう。

法人の場合と個人事業の場合とで経費に計上できる費用の範囲は異なります。

会社員が副業として個人事業で不動産投資を始める場合、勤務先の会社で経費とできるものを同じ感覚で不動産投資においても経費として計上すると、後から税務署の指摘を受けることがあるため要注意です。

3-2.不動産投資用ローンの勉強をする

不動産投資を始める際は全額自己資金ではなく、不動産投資用のローンを組むことが多いと思われます。

不動産投資用のローンは、フラット35などの住宅ローンとは異なる事業用のローンです。

不動産投資でローンを組むのであれば、ローン契約の内容がどのようなものか十分に勉強して理解しておく必要があります。

特に、不動産投資用のローン契約においてポイントとなるのは返済回数、利息・元本の充当割合、一括返済を求められる条件などです。

3-3.不動産投資の現場を見に行くことも勉強になる

不動産投資は株式など有価証券への投資と異なり、投資対象そのものを知ることが重要です。

購入を検討している不動産投資用物件がある場合、まずは現地を見に行くことを推奨します。

不動産について図面だけではわからないことも、実際に現地に行けばよくわかります。

投資を検討している物件の現況のほか、周辺環境の良し悪しや地盤の状態なども知ることができ、より確実に投資対象となる不動産の価値を判断できるのです。

また、すでに投資用として運用されている不動産のオーナーチェンジの場合、売主から提供されたレントロールの入居率などの数値が本当に合っているか、なども現地調査で知ることができるでしょう。

日頃からさまざまな投資用の不動産を見ておくことで、実際に投資用不動産として購入する物件を見極める眼を養うこともできます。

3-4.有名な不動産投資家から学ぶ

実際に不動産投資を始めている中上級者にとっては、有名な不動産投資家の話は勉強になることが多いでしょう。最近では有名な不動産投資家がSNSや本などで情報発信をしているケースが増えてきました。

有名な不動産投資家の本を参考にすることや、他の不動産投資家による勉強会やセミナーに積極的に参加し、情報収集を怠らない努力は中上級者になっても大切といえます。

ただし、他の不動産投資家から物件や業者を紹介される場合は、紹介料を目的としたポジショントークをすることがあると念頭に置き、聞いた情報について投資家自身でも必ず妥当性を検証するようにしましょう。

4.まとめ

最近は地主や資産家などでなくても不動産投資を始める人が増えてきました。

これから不動産投資を始める方でも、SNSやインターネットなどで手軽に情報を収集できます。

しかし、「かぼちゃの馬車事件」が世間を賑わせたように、不動産投資の初心者が気をつけなければいけない落とし穴もたくさんあるのです。

不動産投資を始める際には、不動産投資について十分に理解してから参入することをおすすめします。

不動産投資に関して勉強すべき事柄は多岐にわたるため、不動産投資を始めた後でも継続的に知識のアップデートが必要です。

不動産投資の勉強をする余裕がないけれど不動産投資には興味があるという場合、J-REITや不動産クラウドファンディングなどに投資をすることも一つの選択肢となるでしょう。

J-REITや不動産クラウドファンディングについてもある程度の知識は必要ですが、不動産取引そのものに関する税務や投資する不動産の選択など、運用業者が投資家の代わりに行ってくれます。

いずれにしても、投資を検討する場合には投資対象のリスクを十分に理解したうえで、自分のニーズに合った投資先を選択することが大切です。


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