エクイティ型ファンドとは?貸付型ファンド(ソーシャルレンディング)の違いとあわせて解説
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近年、「エクイティ型ファンド」という言葉を見聞きする機会が増えました。
貸付型ファンド(ソーシャルレンディング)と比較して語られることが多いため、気になっていた人もいるのではないでしょうか。
今回はエクイティ型ファンドとは何か、貸付型ファンド(ソーシャルレンディング)とは何が違うのかを解説していきます。
代表的なエクイティ型ファンドの投資対象についても案内していきますので、投資判断の参考にしてください。
1.エクイティ型ファンドとは?エクイティ型ファンドと貸付型ファンドとの違いも解説
不動産やインフラストラクチャー(太陽光発電設備など)に投資をするには以下の方法があります。
直接投資(現物投資) | 現物の不動産やインフラストラクチャー(太陽光発電設備など)に直接投資をする。 |
間接投資(ファンド投資) | ファンドを介して不動産やインフラストラクチャー(太陽光発電設備など)に間接的に投資する |
ここでは間接投資の「ファンド投資」について説明していきます。
一般的に「ファンド」とは、投資家から集めた資金を運用し、その運用益を投資家に分配する仕組みを指します。
エクイティ型ファンドもソーシャルレンディング(貸付型ファンド)も、第三者が運用したリターンを投資家が受け取る点では同じです。
両者には以下の違いがあります。
種類 | 直接的な投資対象 | 概要 | ファンドの投資対象 |
エクイティ型ファンド | 投資対象ビークル(vehicle)のエクイティ出資持分 | ファンドの投資対象が「自己資本(投資家からの出資など)」を元に運用されている | 実物不動産、不動産信託受益権、インフラストラクチャー(太陽光発電設備など)を運用する |
貸付型ファンド (ソーシャルレンディング) |
最終投資対象が「他人資本(貸付など)」で運用されている | 第三の事業者へ貸付を行う(最終投資対象は不動産やインフラストラクチャー) |
1-1.エクイティ型ファンドとソーシャルレンディングの違い
エクイティ型ファンドは投資家から集めた資金を原資にファンドの営業者が自ら事業を行っています。
対してソーシャルレンディングの場合は、投資家から集めた資金を原資にファンドの営業者は貸付を行います。
なお投資家が直接投資をする対象はビークル(ファンドの器)のエクイティ出資持分である点は両者に共通しています。
それぞれの仕組みとあわせて、詳しく解説していきましょう。
1-2.エクイティ型ファンドとは
一般的に、金融の世界で「エクイティ(Equity)」とは、自己資本を指します。
株式であれば株主が出資した資金(株主資本)、投資法人であれば投資口。そしてGK-TKスキームのTK(匿名組合出資)を指します。
これに対し、「デット(Debt)」は他人資本。金融機関からの借入れや社債の発行により、調達する資金を指します。
このことから、不動産ファンドやインフラファンドのエクイティ部分を投資対象とする投資を「エクイティ型ファンド」、デット部分を対象とする投資を「デット型ファンド」と呼ばれるようになりました。
ソーシャルレンディングも対象事業が「貸付」であるため、デット型ファンドに分類されます。
1-3.貸付型ファンド(ソーシャルレンディング)との違い
貸付型ファンド(ソーシャルレンディング)は投資家が直接投資をする対象はTK(匿名組合出資)です。
こう聞くと、「匿名組合出資はエクイティだったのでは?」と思うかもしれません。
ソーシャルレンディングの場合は、匿名組合出資を原資に貸付を行っている点がエクイティ型ファンドと大きく違います。
ソーシャルレンディング (=貸付型ファンド) |
ファンドの営業者は、匿名組合出資によって複数の投資家から集めた資金を原資に、第三の事業者に対して貸付(シニアローンまたはメザニアローン)を行う。投資家は、営業者が貸付によって得た利益を元に分配金を受け取る |
エクイティ型ファンド (匿名組合出資を原資とする場合) |
ファンドの営業者は、匿名組合出資によって複数の投資家から集めた資金を原資に、不動産などを購入して運用する。投資家は、営業者が不動産などを運用して得た利益を元に、分配金などを受け取る |
ソーシャルレンディング(貸付型ファンド)の場合、資金を集めたファンドの営業者が直接不動産などを運用するわけではありません。
営業者の事業は、あくまで第三の事業者への「貸付」なのです。
そのため投資対象の価格変動の影響は受けにくいのが利点(※)ですが、投資対象の情報が限定的である点はデメリットと言えます。
(※)ただし責任財産限定特約付ローン(ノンリコースローン)などで責任財産以外に担保がない場合は最終投資対象の価格変動の影響を受ける可能性があります。
一方でエクイティ型ファンドは、資金を集めた営業者が直接不動産などを購入して運用を行います。
不動産など投資対象の価格変動などの影響を受けやすい分、リターンも高くなりやすい特徴があります。
また、ソーシャルレンディングに比べて投資対象の情報を得やすい点は、エクイティ型ファンドのメリットと言えるでしょう。
2.エクイティ型ファンドの投資対象
エクイティ型ファンドの投資対象で代表的なものは、不動産とインフラストラクチャー(太陽光発電設備など)です。
ここではエクイティ型の不動産ファンドと太陽光発電ファンドの種類について、解説していきましょう。
2-1.エクイティ型不動産ファンド
エクイティ型不動産ファンドは、大きく分けて以下の4つがあります。
ファンドの種類 | 特徴 |
不動産私募ファンド | 多くは匿名組合出資などを原資として不動産信託受益権に投資する、非上場の不動産ファンド。 3~5年の運用期間後に投資対象を売却し、元本を回収するケースが一般的なので投資期間は短い。 原則として、運用期間中の解約や資金の引き出しは制限されているため、流動性は低め |
不動産クラウドファンディング (不動産特定共同事業) |
多くは匿名組合出資などを原資として実物不動産に投資する、非上場の不動産ファンド。 最低投資額が1万円に設定されていることが多く少額で投資できる。 原則として、運用期間中の解約や資金の引き出しは制限されているため、流動性は低め |
上場REIT(J-REIT) | 証券取引所に上場している不動産投資信託。 無期限運用のファンドが多く、長期的に投資できるのが特徴。 市場が開いている間であれば自由に売買できるため、流動性は高め。 ただし、投資対象の運用成績とは関係なく金融市場の影響を受けるため、不動産私募ファンドに比べて値動きは不安定になる |
私募REIT | 非上場の不動産ファンド。 機関投資家や金融機関向けなので、一般の投資家が直接投資することはできない。 |
2-2.エクイティ型太陽光発電ファンド
エクイティ型の太陽光発電ファンドの種類は、大きく分けて以下の2つです。
ファンドの種類 | 特徴 |
非上場太陽光発電ファンド | 匿名組合出資などを原資として投資する、非上場の太陽光発電ファンド。 弊社の「ソライチファンド」も該当する。一般的に運用期間は20年で設定されており、運用期間中の解約や資金の引き出しは制限されている。 金融市場の影響を受けないため、長期で安定した利益を得やすい一方で、流動性は低め。 |
投資法人型インフラファンド | 再生可能エネルギーへ投資するファンドで、非上場型と上場型がある。 J-REITと似た仕組みで運用されており、投資法人をファンドに活用している。 上場している場合は流動性が高くなるが、金融市場の影響を受ける。 |
太陽光発電設備は長期保有が一般的ですので、ファンド自体も長期で安定した収益を得ることを目的に運用されているケースが多いです。
もちろん太陽光発電ファンドでも、上場している投資法人型インフラファンドなら流動性の高い取引は可能です。しかし上場していると金融市場の影響を受けやすくなります。
金融市場の影響を受けにくく「安定したインカムゲインを長期的に受け取りたい」のであれば、ソライチファンドのような非上場ファンドのほうが、太陽光発電そのもののメリットを享受しやすいといえるでしょう。
3.エクイティ型投資では、デット割合の確認が重要
エクイティ型ファンドは、資本の一部がデット(借入れなどの他人資本)になっている場合もあります。
資本をデットにすれば、そのぶんレバレッジをかけられるため、より大きなリターンを見込めるでしょう。
しかしレバレッジをかけるということは、リスクも増大するということです。
ファンドの資本がフルエクイティの場合、資産価値が3割落ちたときに毀損する割合は3/10です。
しかし60%のデット(優先債権)、40%のエクイティ(匿名組合出資)のときに資産価値が3割落ちると、エクイティの3/4が毀損してしまいます。
このように、一口にエクイティ型ファンドと言っても、デット割合によって生じるリスクは異なります。
エクイティ型ファンドへ投資する際はファンドのスキームとデット割合をよく確認し、リスクを鑑みたうえで投資判断をしてください。
4.まとめ
エクイティ型ファンドとは、投資家から集めた自己資本を元に運用されているファンドを指します。
そのため、第三の事業者への貸付を行うソーシャルレンディングと比べると、事業の全容や情報を把握しやすいのが特徴です。
ただ一口にエクイティ型ファンドと言っても、投資対象や投資のスキーム、資本の主体はさまざまです。
デット割合が高い場合はリスクも高くなるため、エクイティ型というだけでファンドの良し悪しは判断できません。
エクイティ型ファンドは単なるファンド分類の一つにしか過ぎないため、投資する際はスキームやリスクをしっかり確認しておきましょう。