「貯蓄型保険は必要ない」は本当か?保険募集経験のあるFPが解説

 

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「貯蓄型保険はお得ではないし、必要ない」

近年、こうした「貯蓄型保険不要論」をよく見聞きします。

たしかに2021年現在の貯蓄型保険は予定利率が低く、決して貯蓄性がいい商品とは言えません。

一方で元本保全性が高く、加入時に資金の出口を確定させやすい点は貯蓄型保険ならではのメリットです。人によっては、こうした特性が資産形成に適している場合もあるでしょう。

結局、必要か不要かは人によって違います。

貯蓄型保険が良いか悪いかではなく、商品の特性をよく理解したうえで、自分に必要かどうかを判断することが大切ではないでしょうか。

この記事では、保険募集経験のある筆者が貯蓄型保険のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。

「必要かどうか、自分で判断できるようになりたい」方は参考にしてください。

1.貯蓄型保険が「必要ない」と言われる理由をFPが解説

一般的に、万一の際の保障に貯蓄機能が付いた保険を「貯蓄型保険」と言います。

貯蓄型保険が「無駄」「必要ない」と言われる理由は貯蓄機能の低下にあります。

それぞれ詳しく解説していきましょう。

1-1.貯蓄型保険とは

貯蓄型保険とは、保険の機能に貯蓄機能もセットになった保険を指します。

具体的には、契約年数に応じた解約返戻金や満期金、年金や学資金を受け取れる保険のことです。

明確な定義があるわけではありませんが、一般的には以下の商品が貯蓄型保険にあたると言われています。

貯蓄型保険の種類

保障の目的 名称 内容
死亡保障(遺族保障) ・終身保険(ドル建て・円建てなど)
・養老保険 ・変額保険
・契約者の死亡・高度障害時に所定の保険金が支払われる
・一定期間継続すれば、生存中でも払い込んだ保険料以上の解約返戻金を受け取れる
老後保障 ・個人年金保険
・変額個人年金保険
・契約者があらかじめ定めた年齢に達したら所定の年金が支払われる
教育費の確保 ・学資保険 ・子どもの進学時期にあわせた学資金を受け取れる
・親が死亡、高度障害時には以降の保険料払い込みを免除する特則を付帯できるため、親の死亡保険としても代用できる
医療保障 がんの保障 ・貯蓄型の医療保険
・貯蓄型のがん保険
保障を使わなければ積み立てた保険料が戻ってくる

*実際に保険会社が貯蓄型保険という分類をしているわけではなく、明確な定義はありません

いずれの保険も一定期間継続すれば、払い込んだ保険料相当額の保険金を受け取れるのが特徴です。

そのため、保険だけど貯蓄性があることから「貯蓄型保険」と言われるようになりました。

反対に、返戻金や満期金のない保険は「掛け捨て型保険」と言われています。

1-2.貯蓄型保険が「無駄・必要ない」と言われる理由

保障を持ちつつ貯蓄もできるとして、安定した人気のある貯蓄型保険。

しかし近年では、貯蓄型保険を「無駄・必要ない」という意見も聞かれるようになってきました。

必要ないという意見の多くは、貯蓄型保険の予定利率*低下による、貯蓄機能の悪さを指摘しています。

*予定利率とは保険会社が契約者に約束する運用利回りのこと。2021年現在では、国が定める標準利率を元に各会社が独自に予定利率を決めています。

バブル期には、貯蓄型保険の予定利率は年5%程度の水準でした。

しかし2021年現在の予定利率は大幅に引き下げられており、円建て保険だと年0%台*であることがほとんどです。

国が決めている標準利率がすでに0.25%になっているため、各社の利率も低くなることは仕方がありません。

とはいえ、30年前に年5%だったころの貯蓄型保険とは全く別物の商品になっているといえます。

*実際の予定利率は商品によって異なる

例えば、子どもの教育費を積み立てる学資保険。

近年の返戻率は良くて104%~5%程度。保険会社によっては100%を下回る商品も出てきています。

仮に10年以上積み立てた保険料の合計が100万円だとすれば、受け取れる学資金は104万円~105万円程度。商品によっては元本割れする可能性もあるのです。

資産運用商品としてみると心もとないと思う方もいるでしょう。

こうした貯蓄機能の低下を指摘して「年利3%~5%程度で低リスク型の投資信託を運用したほうが投資効率は良い」という意見もあります。

しかし、そもそも保険と投資信託はまったく別の金融商品です。

貯蓄型保険は満期まで継続すれば元本保全性が極めて高くなりますが、投資信託には元本保証がありません。

貯蓄型保険はあくまで保険ですが、投資信託は投資商品。仕組みが違うのです。

元の性質が異なる商品を同列に並べて比較しても、良い・悪いとジャッジすることはできません。

利用する方の価値観やリスク許容度、ポートフォリオによっては貯蓄型保険が適している場合もあります。

商品特性をよく理解し、自分には合うかどうかを判断することが大切です。

2.貯蓄型保険のメリット・デメリット

ここでは、貯蓄型保険のメリットとデメリット、投資信託や定期預金との違いをお伝えしていきます。

人によってはメリットがデメリットに感じることも、その逆もあるでしょう。

「自分にとってはメリットになるのかどうか」をよく見極めるようにしてください。

2-1.メリット

貯蓄型保険のおもなメリットは以下の5つです。

  • あらかじめ資金の出口を確定させやすい
  • 保障を持ちつつ強制的に貯蓄できる
  • 一定期間継続すれば、高い元本保全性がある
  • 所定の状態になると保険料の払い込みが免除される場合がある
  • 保険会社が代わりに資産運用してくれる

筆者が思う一番のメリットは資金の出口を確定させやすい点です。

例えば学資保険なら、契約時点で将来の受け取り資金を確定できます。

「大学進学時にいくら受け取れる」かが明確なので、資金計画を立てやすく、積み立てている間は保障機能で万一に備えられます。

万一の保障を持ちつつ、高い元本保全性で出口を確定させて資金を用意できる点は、保険ならではの特性ではないでしょうか。

2-2.デメリット

一方で貯蓄型保険には3つのデメリットがあります。

  • 基本の機能が保険のため、貯蓄部分の利回りは低い
  • 契約して早期で解約すれば元本割れする可能性が高い
  • 一定期間継続しなければならないため、資金の自由度が低い

先述のとおり、貯蓄型保険の予定利率は低下しています。

投資信託や株式のような高い利回りは期待できず、早期に解約すれば元本割れする可能性が高い点に注意しましょう。

貯蓄型保険は保険会社と契約を結ぶため、解約には手続きが必要ですし、簡単にはやめられません。

長期間資金が拘束されて資金の自由度が低いため「絶対に必要な資金」を強制的に用意するための商品と言えます。

2-3.預貯金・投資商品と貯蓄型保険の比較

貯蓄型保険と預貯金・投資商品との違いをわかりやすく表にしました。

各商品の特性を知り、検討材料にしてください。

預貯金・投資商品と貯蓄型保険の比較

  貯蓄型保険 投資信託 定期預貯金
元本の保全性 満期など決まった期間継続すれば、元本の保全性が高い。
解約時期によっては元本割れする可能性があるため、早期の解約に要注意
元本保証はないため、元本割れする可能性がある 元本保証あり
金融機関が破綻した際の契約者保護制度 生命保険保護機構
・責任準備金の90%までを補償
*高予定利率契約を除く
投資者保護基金
・証券会社で購入した投資信託のみを対象に、顧客一人当たり1,000万円まで補償
預金保険制度
・元本1,000万円+破綻日までの利息が補償される
期待リターンの目安 商品や契約方法・解約時期によって変動する。
一定期間継続すれば、預貯金より期待リターンは上がる商品が多い
年3%~年5%程度
*実際の運用成果はファンドにより異なる。あくまで一般的な目安
年0.03%~0.2%
資金の自由度・流動性 低い
・中途解約を防ぐ契約者貸付制度はあるが、利息が発生する
高い
・営業期間内であれば取引(売買)は自由。現金化までには1週間程度かかる
高い
・いつでも引き出せる
節税制度 所得控除(生命保険料控除)によって所得税・住民税を軽減できる NISA(少額投資非課税制度)口座内の取引に課税されない なし

貯蓄型保険の期待リターンは預貯金よりやや高めで、投資信託に比べると低くなります。

その分保険としての保障機能が付いている点は魅力ですが、金融機関破綻時のセーフティネットは100%補償してくれません。

万一の保障があるとはいえ、破綻時の可能性もふまえると預貯金よりリスクはやや上がる点に留意しましょう。

このように期待リターンが高ければ、その分リスクは高くなります。

何か一つの商品に集中するのではなく、それぞれの商品をバランスよく組み合わせて資産形成に活かすのがいいでしょう。

3.資産形成の一つとして貯蓄型保険を活用しよう

貯蓄型保険は、長期間継続しなければ元本割れする可能性が高い商品です。

商品によって元本割れを回避できる年数は異なりますが、一般的な生命保険・学資保険なら十数年以上の支払い期間が必要であることが多いです。

こうした資金の不自由さは、逆に言えば「絶対に用意しなければならない」資金を強制的に貯める方法に向いているとも言えます。

例えば、あらかじめ必要な時期が決まっている教育費のような資金には、出口が明確な学資保険が適しています。

親に何かあった際の保障に備えつつ、強制的に資金を積み立てできる点は保険ならではの特性でしょう。

また、人によって投資に対する価値観やリスク許容度は異なります。

資産運用する際に期待リターンを高めたい方だけでなく、安全性を重視したい方もいるはずです。

そもそも投資信託や株式投資といった投資商品には抵抗がある方や貯蓄が苦手な方もいるでしょう。

金融商品を見るとき、貯蓄機能の点だけでは自分に合っているかどうかは判断できません。

貯蓄型保険についても、商品の特性をしっかり把握したうえで、資産形成手段の一つとしてうまく活用することをおすすめします。

4.まとめ

金融商品にはそれぞれメリットとデメリットがあり、向き不向きは人によって違います。

貯蓄型保険は期待リターンが低いため、貯蓄機能だけを見ると優れた商品とは言えません。

しかし貯蓄型保険の本質は「保険」です。

継続さえすれば高い元本保全性を期待でき、資金の出口を確定させやすい点は大きなメリットでしょう。

「何歳でいくらぐらい資金を受け取れるのか」を明確にさせたい方は、貯蓄型保険を活用するのも一つの方法です。

商品の特性をよく見て、ご自身で必要かどうかを判断してください。


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