家賃値下げ交渉をされたら?大家の対処法について解説

 

この記事の目次

不動産投資をしていると入居者から家賃値下げ交渉を受けることがあります。

一番多いのが空室の新規募集時に申込者から行われる値下げ交渉です。

このほか賃貸借契約の更新時に入居者から値下げを求められることもあります。

そこで、家賃値下げ交渉を受けた大家としてどのように対応すべきかを詳しく解説します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • 家賃値下げ交渉は新規募集時と契約更新時に多い
  • 交渉を受けた時期が賃貸需要の高まる時期であれば値下げ不要なこともある
  • 交渉に応じる場合でも短期解約違約金など採算を確保する方策を考える

1.家賃の値下げ交渉に応じるべきか

アパート経営をしている大家にとって悩ましいのは、入居者や入居希望者からの家賃値下げ交渉です。

家賃値下げ交渉の実態と応じるべきケースについて具体的に説明します。

1-1.募集時と更新時に多い家賃交渉

入居者の募集時に家賃の値下げ交渉が行われることはよくあります。

入居希望者に気に入った物件が複数あれば、ダメ元でも家賃の値下げ交渉をするためです。

空室が長期にわたって継続している部屋であれば、値下げしてでも入居してもらったほうがよいこともあります。

よほどの人気物件でない限りはすぐに断らずに一度値下げをすべきか検討してみてもよいでしょう。

賃貸借契約の更新のタイミングで既存の入居者から値下げ交渉をされることもあります。

入居者からすると家賃1ヶ月分相当の更新料は負担感が大きいため、家賃の値下げができないのであれば他の物件への引っ越しを視野に入れたいとの思惑もあるでしょう。

また、入居当初からの築年数が経過しているため建物が老朽化していると感じているケースがあり、これが契約更新時の値下げ交渉につながるという背景もあります。

ただ、家賃の値下げ交渉に応じるとしても、大家が支払っているローンや管理費、固定資産税などの必要経費を下回る賃料にできないことは当然です。

大家としては採算がとれる賃料のラインをあらかじめ計算した上で交渉をすることが大切です。

1-2.賃貸需要のタイミング

大家が値下げ交渉に応じるか否かの判断においては、交渉を持ちかけられたタイミングも重要です。

賃貸需要は年間を通して一定ではないためです。

賃貸需要が少ない時期で空室が埋まる見込みがない場合には、値下げ交渉に応じざるを得ないことがあります。

一般的には、新年度に向かう1〜3月に引っ越しが増えるため賃貸需要は高まるといわれています。

反対に、6〜8月は天候の問題もあり需要が減少しがちです。

家賃値下げ交渉を受けたタイミングが需要の高まる時期の直前である場合には、安易に値下げに応じず少し待つという選択もありうるところです。

ただし、賃貸需要については、物件のあるエリアや物件のタイプによって大きく異なります。

例えば、大学が近い学生街であれば受験シーズンから3月末まで賃貸需要が大きく高まりますが、その他の季節はあまり物件が動きません。

したがって、3月末までに空室が埋まらない場合にはその後1年近く空きが続く可能性を視野に入れることも必要です。

これに対し、単身のビジネスマンが多く住むエリアや物件であれば、季節による需要の変動は一応あるものの、年間を通して人事異動や赴任による引っ越しが起こります。

このため、年度末に空室が埋まらなかったとしても、よほど不人気エリアでもない限りその後に埋まる可能性があります。

シーズンごとの賃貸需要については、不動産会社が詳しい情報を持っていることが多いため、値下げ交渉を受けたら一度、媒介を依頼している不動産会社などに相談してみるのもよいでしょう。

1-3.家賃値下げ交渉に応じるべきケースとは

以上を踏まえて、大家として前向きに家賃値下げ交渉に応じたほうがよいケースは次のとおりです。

  • 入居期間が長い賃借人からの更新時の家賃値下げ交渉
  • 長期空室となる可能性が高い物件の家賃値下げ交渉

入居期間が長く、これまで家賃滞納や近隣トラブルなどの問題もない入居者には、そのまま住んでもらったほうが大家としてはリスクが低いといえます。

家賃交渉に応じず既存の入居者が退去して新しい入居者がみつかったとしても、その人が1〜2ヶ月の短期で退去するとか家賃滞納などのトラブルを起こさないとは限りません。

入居期間が長い人は基本的にその物件を気に入っているため、更新すればその後も長期にわたり住んでくれる可能性があります。

また、これまでトラブルを起こしていないのであれば、その後もトラブルが発生しない可能性が高く、大家としては安心です。

また、築年数が経過している物件だと、新規募集の際に従前どおりの賃料設定をしても決まりにくいことがあります。

このため、近隣エリアにおける同等の築年数の物件について家賃相場などを調べて、値下げ交渉を受けている家賃が相場と比較して高いのか安いのかを把握しておくことも重要です。

仮に新規募集をする際に賃料を下げざるを得ないということであれば、値下げ交渉に応じてでも既存の入居者に住み続けてもらったほうが基本的にはよいでしょう。

ただし、いくら既存の入居者に住み続けてもらいたいとしても、周辺相場を下回る大幅な値下げは不要です。

これに対して、新規募集時の家賃値下げ交渉は応じるべきかの判断が難しいものの、既に6ヶ月以上など長期間にわたり空室になっているケースや、周辺の環境の変化などによって賃貸需要が明らかに減少している場合には、値下げに応じる余地はあるといえます。

2.家賃交渉を受けた大家の対処法

家賃の値下げ交渉を受けた大家としては次の手順で対処するとよいでしょう。

2-1.周辺相場を調べる

まずすべきことは周辺の賃料相場を調べることです。

賃料相場の調べ方は次のとおりです。

  • ネット上の募集広告などから近隣の同等物件の賃料相場を調べる
  • 不動産会社や管理会社に相場を聞く
  • 近隣で長期にわたる空室が多く出ているかを確認する

最後の近隣物件の空き状況は、インターネット上の募集広告をみればある程度把握できます。

大家の所有する物件と同等の条件(駅からの距離、築年数、面積など)で検索してみて募集が多数出ているのであれば、賃貸物件の供給が需要を上回っていると考えられ、なかなか空きが埋まりにくいことがあります。

もっとも、同一条件で空室が多数出ていたとしても、自分の物件の賃料がそれらより安いというのであれば埋まる可能性はもちろんあるでしょう。

2-2.値下げに応じる場合:交換条件を提示

家賃の値下げ交渉に応じると判断した場合、単に相手の要求どおりに家賃を下げて終わりではなく、交換条件を提示できないか検討することをおすすめします。

交換条件としては、例えば短期解約違約金の設定や定期建物賃貸借とすることが考えられるでしょう。

短期解約違約金について、空室の長期化を避けるためにやむなく家賃交渉に応じたのに、入居者が1〜2ヶ月の短期で退去するとなれば広告費などで赤字になってしまうことがあります。

それを防ぐため、広告費などすべてのコストを勘案して採算がとれる最低入居期間を計算し、これを下回る短期での解約があった場合には違約金を請求するとの条項を賃貸借契約書に入れておくとよいでしょう。

最低入居期間は6ヶ月から1年程度、短期解約違約金の金額は家賃1ヶ月分相当とすることが比較的多いでしょう。

なお、本来は当事者が同意すればどのような金額の違約金も定めることができますが、入居者が事業者ではなく一般の人である場合には注意が必要です。

違約金が通常発生する損害の額を超える金額である場合、消費者契約法9条によって短期解約違約金の条項が無効となることがあります。

このほか、家賃交渉に応じる意思はあるものの、将来的なマンション管理費や固定資産税の上昇などによって値下げした家賃では赤字になる可能性がある場合には、賃貸借契約を定期借家契約にしておくとよいでしょう。

一般的な賃貸借契約は「普通借」と呼ばれ、契約期間満了後に大家側から更新拒絶をすることや契約条件を変更することが困難です。

したがって、一度家賃の値下げをすると入居者が退去しない限り、ずっと値下げした家賃のままとなります。

これに対し、定期借家契約であれば、契約期間満了時の更新が予定されていません。

このため、入居者が契約期間満了後も住み続けたいと希望する場合には、家賃を増額して再契約することも自由にできます。

入居者が家賃の増額に応じなければ、大家側の一存で退去を求めることができるのです。

2-3.値下げに応じない場合:代替案を提示

家賃の値下げ交渉には応じないという判断も、もちろんあり得るところです。

この場合でも入居者をつなぎとめておきたいのであれば、一定期間のフリーレントを提案することや、家賃を値下げしない代わりに敷金などの初期費用を減額するという交渉も検討したいところです。

ただし、初期費用の減額に関しては、敷金を0円にすると退去時のクリーニング費用の負担などをめぐって入居者とトラブルになる可能性があります。

このため、敷金については、家賃保証会社を利用している場合であっても、最低家賃1ヶ月分は預かっておいたほうがよいでしょう。

なお、家賃滞納が発生した場合の大家側の手続きについては以下の記事に解説しています。

3.まとめ

賃貸マンションを購入して不動産投資を行っている方にとって、入居者からの家賃値下げ交渉はあまり嬉しいものではありません。

しかし、どのように対応するかによって、長い目で見たときの賃料収入が増える可能性もあります。

最近ではマンション投資が流行っていることもあり、賃貸物件の供給が増えています。

このため、入居者としては物件を選べる立場であり、値下げ交渉をしてくることは十分にあるでしょう。

不動産投資家としては、事前にどの程度の値下げが可能であるか採算ラインを確認しておくと、いざというときに慌てずに対応することができます。


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