FIT制度の終了後はどうする?太陽光発電の出口戦略4つと1つの新提案

 

この記事の目次

住宅用太陽光発電であれば10年間、事業用太陽光発電であれば20年間で、FIT制度の適用期間を終えることとなります。

FIT制度を終えたあと、個人の太陽光発電事業者はどう対応すれば良いのでしょうか?

ここでは、太陽光発電投資にはどのような出口戦略があるのか、考えられる選択肢をピックアップしました。

出口戦略に不安があり太陽光発電のスタートを迷っている場合は、本記事の方法が解決案となるはずです。

1.FIT制度(固定価格買取制度)のおさらい

FIT制度(固定価格買取制度)は、再生可能エネルギーの普及促進を目的として施行された制度です。

再生可能エネルギーによって発電された電気は、FIT制度により規定された価格で一定期間、電力会社によって買い取られることが約束されます。

2012年7月にスタートしたFIT制度は、発電方式や発電出力に応じて規定する買取価格・買取期間が異なり、再生可能エネルギーの普及状況にあわせて内容が変更されてきました。

2020年度における、太陽光発電の買取価格・買取期間は以下の通りです。

設備規模(発電出力) 買取価格 買取期間
住宅用太陽光発電
(10kW未満)
21円 10年間
小規模事業用太陽光発電
(10kW以上50kW未満)
13円+税
※地域活用要件あり
20年間
事業用太陽光発電
(50kW以上250kW未満)
12円+税 20年間
事業用太陽光発電
(250kW以上)
入札により決定 20年間

上記のうち、小規模事業用太陽光発電(10kW以上50kW未満)の欄にある「地域活用要件」は、2020年度以降にFIT制度の認定を受けた場合に課せられる2つの義務です。

  1. 当該再エネ発電設備の設置場所を含む一の需要場所において、発電電力量の少なくとも 30%の自家消費を行うこと。又は、発電電力量の少なくとも30%について、電気事業法に基づく特定供給を行うこと。
  2. 災害時に活用するための最低限の設備を求めるものとして、災害時のブラックスタートが可能であることを前提とした上で、給電用コンセントを有し、当該給電用コンセントの災害時の利活用が可能であること。

引用:資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」

これらの条件により、2020年度以降にFIT制度の認定を受けた、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は発電した全電力を売却できません。

少なくとも発電量の30%は自家消費に充てなければならず、売却できる電力は最大70%です。これに伴い、設備構造も事業計画も、余剰買取を前提としたものを準備する必要があります。

さらに、災害時に太陽光発電設備を非常電源として活用できるよう、ブラックスタート(停電時に外部電源に頼らず発電すること)に対応できる設備を備えなければなりません。

具体的には、給電用コンセントや、自立運転機能と呼ばれる機能を持ったパワーコンディショナが必要となるのです。

このほか、固定価格買取制度についての詳しい解説、および余剰買取と全量買取の相違点については以下の記事で解説しています。

太陽光発電を始めるにあたり、真っ先に把握しておくべき事項であるため、本記事とあわせてご参照ください。

2.FIT制度の終了後はどうするの?

投資目的で運用する事業用太陽光発電であれば、FIT制度の適用期間は20年です。20年後がどうなっているのか分からないからこそ、早い段階から「出口戦略」について考えることをおすすめします。

2-1.FIT制度の終了とともに太陽光発電設備を廃棄

空き地に設置されている事業用太陽光発電であれば、FIT制度の終了とともに設備を廃棄する選択は主要な出口戦略の1つです。土地を保有している場合、設備の廃棄後に土地を別の形で活用することも候補に挙がります。

廃棄であれば、電力会社との再契約・設備売買などの取引は発生しませんが、廃棄に費用がかかる点には注意しなければなりません。個人規模の太陽光発電設備に多いスクリュー基礎のケースであれば、一連の廃棄作業にかかる費用は1kWあたり1.06万円です。

出典:総合資源エネルギー調査会「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ中間整理(案)」

廃棄を出口戦略の候補として検討するのであれば、資料を参考にして廃棄費用の概算を求めると良いでしょう。

たとえば、50kWの太陽光発電設備であれば、約53万円の費用がかかる計算です。ただし、上記資料はいまだ数が少ない廃棄事例をもとに算出された数値であり、実際の廃棄時にこの価格帯が適用される保証はありません。

経済産業省の資料、委員会の討論では、廃棄費用の指標として資本費(初期投資額)の5%程度を目安とする考えもあるため、これらの数値を参考に多少シビアな計算を行うのが理想的です。

2-2.FIT制度の終了前に中古市場へ売却

FIT制度の終了前に、中古市場(セカンダリー市場)へ売却することで、運用している設備をそのまま手放せます。中古市場は今後盛り上がるといった予想もあり、事業用太陽光発電の場合は検討する価値のある出口戦略です。

ただ、手放すタイミングによって売却価格が左右されるおそれがあり、売却前には売り時を見極めるための市場リサーチが欠かせません。正確な収支を予想しづらい方法であるため、本手法とは別の出口戦略も検討しておいた方が無難でしょう。

2-3.発電した電力を自家消費する

発電設備を建物の屋根に取り付けていたり、建物と併設していたりする場合、発電した電力を自家消費することで継続して太陽光発電設備を活用できます。自宅に太陽光発電設備を取り付けているケースはもちろん、オフィスや工場の屋根に取り付けているケースも、自家消費は現実的な選択肢です。

定期的なメンテナンスさえ行えば、長期にわたって光熱費削減が期待できるでしょう。

2-4.新たに売電先を見つける

2019年度にFIT制度を終えた一部の住宅用太陽光発電では、FIT制度の適用期間を終えたのちに新たな売電先を見つけ、取引先のプランに応じた価格で売電を行うケースが増えてきました。

2020年時点では、1kWあたり8~10円程度で電力の買い取りが行われています。

ただし、現状で買い取りが行われている対象は、FIT制度を終えた住宅用太陽光発電が主であり、事業用太陽光発電に関してはどのようなプランが登場するのか分かりません。

すでに制度適用の終了を見越して「事業用太陽光発電向けの卒FITプラン」を展開する企業も登場していますが、本格的に複数社がプランを展開するのは少し先になりそうです。

3.出口戦略に不安があるなら「ファンド」も候補

ここまで太陽光発電の出口戦略について解説してきました。しかし、いずれも具体的なイメージが浮かばず、不安が払しょくされないままなのであれば、新たな選択肢として「太陽光発電ファンドの運用」を検討することをおすすめします。

太陽光発電ファンドは、出口戦略の考案が不要な太陽光発電投資だからです。

3-1.太陽光発電ファンドとは?メリットについて

太陽光発電ファンドは、複数の出資者から集めた投資資金を使って、太陽光発電事業へ投資をする金融商品です。以下のようなメリットを持っているほか、あらかじめ運用期間が定められており、ゴールが固定されているため出口戦略を考える必要がありません。

  • 少額から投資を始められる
  • 設備運用を専門家に一任できる
  • 値動きを気にせず資産形成ができる

投資資金を複数の出資者から集める特性上、1人あたりの最低投資額は低く設定されており、弊社が提供する『ソライチファンド』の場合は1口50万円から出資できます。

また、設備運用に出資者が直接関わることはなく、株式市場のように日々の値動きもないため、取引相場を気にすることなく資産を形成することが可能です。

3-2.太陽光発電ファンドのデメリット・リスク

太陽光発電ファンドにも、いくつかのデメリット・リスクがあるため、以下の事項をメリットから差し引いて投資判断を下してください。

  • 融資を利用した投資はできない
  • 発電設備の設置場所・運用方針は決められない
  • 原則として、非上場ファンドは中途解約ができない
  • 投資先の設備が災害に遭遇する等のリスクがある

上記のほか、太陽光発電ファンドが抱えるリスクや注意点は以下の記事にまとめています。「太陽光発電は出口戦略の考案が難しいため、太陽光発電ファンドを検討したい」という場合は、まずこちらの記事をご参照ください。

4.FIT制度に代わるFIP制度について

2022年4月1日から、FIT法(正式名称:電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)は改正されて、再エネ促進法(正式名称:再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)が施行されます。

法改正により、従来のFIT制度に加えて、市場価格に一定のプレミアムを上乗せして取引するFIP制度が創設されることとなりました。

プレミアムは、売り手に対して上乗せされる補助額であり、太陽光発電事業者は電力を市場価格よりやや高く買い取ってもらえるのです。

以下、資源エネルギー庁が公表している図を参照することで、FIT制度とFIP制度の違いを感覚的に理解できます。

出典:資源エネルギー庁「FIP制度の詳細設計とアグリゲーションビジネスの更なる活性化」

FIP制度の導入にあたっては、売電価格の仕組みに注目が集中していますが、規律の面でも以下のような重要事項が設けられます。

  • 事業用太陽光発電事業者は、廃棄費用の外部積立を原則義務化
  • 一定期間内に運転を開始しない場合、制度の認定を失効する

このほか、蓄電池に充電した電力をプレミアムの交付対象とするか、出力制御の適用をFIT制度と同様にするかなど、2020年時点では検討段階の事項もあります。

太陽光発電を投資先の候補と考えるのであれば、FIP制度にまつわる情報は引き続き追っていくべきでしょう。

5.まとめ

太陽光発電を始めるのであれば、FIT制度の適用終了を見据えて出口戦略を考えなければなりません。

一概に正解と呼べる選択肢はないため、あなたが「太陽光発電に対してどう向き合っていきたいのか」が重要な判断基準です。

投資的観点での利益追求、長期的な環境保全への貢献など、太陽光発電を始める目的から逆算して、それぞれの出口戦略に優先順位を付けていくことを推奨します。


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