2021年はどうなる?委員会の公開資料から見る太陽光発電の今後

 

この記事の目次

2021年度以降、太陽光発電の事情は2020年度と比べ、どのように変化するのでしょうか?

資源エネルギー庁の公開資料から、設置コストや廃棄等費用の積立、FIT制度継続の可否など多くの情報が読み取れます。

それらの資料を参考にして、ここでは太陽光発電の今後についてご説明します。

なお、2021年1月12日(第66回)調達価格算定委員会までの情報を参考に作成しており、推察を含め、不確定な事項も含まれますので、ご留意ください。

1.2021年以降の太陽光発電はどうなる?

2021年度、太陽光発電は依然として魅力的な投資先となるのでしょうか?

投資対効果の判断材料となるデータをまとめ、2021年度の太陽光発電について現段階で立てられる予測をご紹介します。

1-1.2021年の設置コストはほぼ下がらない見込み

これまで、太陽光発電設備の設置コストは、年々低下する傾向にありました。しかし、2021年度における設置コストは、2020年度とほぼ変わらないものと予想されています。

以下は、太陽光発電協会によるアンケート結果から明らかとなった、地上に設置する太陽光発電設備の2021年度におけるシステム価格です。

出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電の状況 主力電源化に必要な新規案件開発継続」

2020年度まで設置コストは年々低下していましたが、2021年度はほぼ前年と変わらない価格水準となっており、50~250kWの設備に関しては前年より価格が上昇しています。

一方、屋根に設置するタイプの太陽光発電設備は、価格が上昇しているケースこそないものの低下はほとんど見られません。

出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電の状況 主力電源化に必要な新規案件開発継続」

以上のデータから、2021年度における設置コストの水準は、前年と比べてそれほど変わらないものと考えられます。

ただし、上記はあくまでアンケート結果に基づいたデータであり、実際には価格がより大きく上下する可能性もあります。

1-2.2021年度も太陽光発電のFIT制度は継続

以前より、一部から「FIT制度はなくなる」といった予想がありますが、2021年度も太陽光発電のFIT制度は継続する見込みです。

2020年6月、FIT制度の見直しを踏まえて「エネルギー供給強靱化法」が成立し、2022年4月からFIP制度と呼ばれる新制度が創設されます。

ただし、いきなりすべての太陽光発電設備がFIT制度の適用外となり、FIP制度への移行を強制されるわけではありません。

なぜならFIP制度において想定されるkWh価値の主な取引方法は次の方法と考えられているからです。

  1. 自ら卸電力取引市場における取引を行う方法
  2. 小売電気事業者との相対取引を行う方法
  3. アグリゲーターを介して卸電力取引市場における取引又は相対取引を行う方法

卸電力取引市場の最小取引単位(現行では50kWh/コマ(30分))との関係で、スポット市場で80%以上の電気供給量を取引できる太陽光発電設備容量規模は、約1MW以上と見込まれています。

また、発電予測や出力調整が難しい自然変動電源や小規模電源については、アグリゲーターを介しての取引が指向されるでしょう。

FIP制度のもとでは、アグリゲーターの役割が非常に重要になるのです。

アグリゲーション・ビジネスを成長促進させる観点から2022年のFIP制度開始時の取り扱いについて、調達価格算定委員会では次のように考えられています。

FIP入札のみ 1MW以上
FIT入札/FIPの選択 250kW以上1MW未満
FIT/FIPの選択 50kW以上250kW未満

2022年の50kW以上1MW未満の太陽光発電設備については、FITとFIPの選択制が設けられる見込みです。

2023年以降、FITが適用される範囲の太陽光発電設備について、段階的にFIP制度のみの対象となっていく予定です。

また、既存のFIT認定を受けた発電設備についても発電事業者の希望に応じてFIPに移行が認められる制度設計が予定されています。

時系列と適用範囲のイメージは、以下が参考になります。

出典:資源エネルギー庁 調達価格算定委員会「太陽光発電について 2020年11月」

今後は段階的にFIP制度への移行が促されることとなり、2021年度は前年までとほぼ変わらないイメージでFIT制度が適用されると予想されます。

1-3.2022年度から導入されるFIP制度について

2022年度から導入されるFIP制度では、FIT制度とは異なり「電力の買取価格」が市場価格に連動して上下します。

出典:資源エネルギー庁「FIP制度の詳細設計とアグリゲーションビジネスの更なる活性化」

上記の画像が示すように、FIP制度では常に市場価格へ一定の補助額(プレミアム)が上乗せされます。

つまり、流動的に決まる市場価格へ補助額が加算される形となり、FIT制度のように一定の買取価格が続くわけではありません。

市場価格の推移によって買取価格が変動するため、発電事業者にとっては収益を予想しづらくなります。

従来、太陽光発電は安定的なリターンを得られる投資先として注目されていましたが、FIP制度への移行後は収支シミュレーションが立てづらくなるでしょう。

FIP制度に関する詳しい解説は、以下の記事で解説しています。FIP制度の種類、すでにFIP制度が運用されている海外の事例を紹介しているので、本記事とあわせてご参照ください。

1-4.調達価格の複数年度提示の可能性(住宅用太陽光発電)

調達価格等算定委員会では、一度に複数年度の調達価格(電力の買取価格)を設定するような提案が見られます。

2020年度まで、太陽光発電の調達価格は1年ごとに公表されていましたが、この方式では「調達価格が切り替わる前後、導入判断ができず導入件数が低迷する」と指摘されたのです。

従来は年度の契約申込締切である11月から、調達価格が決定するまでの3ヶ月間、消費者が「住宅用太陽光発電を導入するかどうか」を判断するための情報が提示されていませんでした。

そのため、11月から2月前後まで導入件数の停滞が見られていたのです。

出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電の状況 主力電源化に必要な新規案件開発継続」

1-5.2021年度以降に検討される地域活用要件の概要

10~50kWの小規模事業用太陽光発電は、2020年度から地域活用要件が課せられました。

2019年度以前、10~50kWの太陽光発電設備は全量買取の対象でしたが、2020年度にFIT制度の認定を受ける太陽光発電設備は余剰買取の対象となったのです。

そのため、発電した電力のうち最低30%を自家消費しなければならず、発電量に対する売電収入の金額は大幅に低下することとなりました。

また、災害時に活用可能な設備にすることも必須化され、以下条件を満たすよう求められています。

  • ブラックスタート(停電時に外部電源なしで発電を再開すること)が可能である
  • 給電用コンセントを備える

10~50kWの太陽光発電設備に関して、調達価格等算定委員会では「現行の地域活用要件を維持して様子を見ることとしてはどうか」といった意見が挙がりました。

よって2021年度以降は、少なくとも2020年度と同程度の地域活用要件が継続されると予想されます。

そのため、2021年度も災害時に活用するための設備投資が必要になり、収益性に直接関係のない部分に割くコストが生じる見込みです。

投資対効果の観点でいえば、2020年度、2021年度にFIT制度の認定を受ける小規模事業用太陽光発電は、地域活用要件のない2019年度以前の案件に比べて劣ります。

なお、以下の通り、50~250kWの太陽光発電設備に関しても、地域活用要件について検討するよう提案されています。

出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電の状況 主力電源化に必要な新規案件開発継続」

これに対し、調達価格算定委員会では次のような意見が出ました。

  • FIT制度からFIP制度、そして最終的には自立するなかで、太陽光はかなり量が増えており、早期に自立すべきではないか。
  • 原則として、FIP制度や入札制に移行すべきであり、その過程で、移行すると社会的に非効率が発生する、といった著しく不合理であると認められるものに限り、地域活用電源などの別の方法を検討すべきではないか。

資源エネルギー庁「太陽光発電について」

50kW以上の事業用太陽光発電については、地域活用要件を設定してFIT制度による支援を当面継続していくのではなく、電源毎の状況や事業環境を踏まえながらFIP制度の対象を徐々に拡大し、早期の自立を促すべきと考えられています。

2021年度について、50kW以上の太陽光発電設備に地域活用要件は設けられない見込みです。

また、2021年度の入札対象は250kW以上に決定されており、2020年度同様、50kW以上250kW未満の設備については、全量買取としてFIT単価が決定されます。

1-6. 2022年以降は廃棄等費用の積立が義務化

2022年度から、廃棄等費用の積み立てを必須とする制度が施行される見込みです。

制度施行の目的は、発電事業を終えた10kW以上の太陽光発電設備が、廃棄費用がないために放置・不法投棄される可能性を防止することです。

「源泉徴収的な外部積立」を基本としており、調達期間(FIT・FIP制度の適用期間)の終了前10年間を積立時期に設定し、電力広域的運営推進機関へ外部積立することとなります。

ただし、例外的に内部積立を許容するケースも想定されており、積立方法によってやや条件に違いが見られます。

出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について」

施行時期は事業ごとの調達期間によって決まり、2012年7月1日から調達期間に入った太陽光発電設備の施行がもっとも早く、2022年7月1日から外部積立が始まります。

2.2021年も太陽光発電は投資対象になる?

現状、公開されているデータをもとにするなら、投資・投機を目的として小規模事業用太陽光発電へ新たに投資することは推奨できません。

投資に適さないと判断できるポイントは、以下の3つに集約されます。

  • 2019年度と比較して、設置コストの大幅な低減が見込めない
  • FIT制度による電力の買取価格は、2019年度より低下する可能性が高い
  • 小規模事業用太陽光発電は、2020年度に続いて地域活用要件が課せられる

設置コストは前年とほぼ変わらない一方、電力の買取価格は例年通り低下すると考えられるため、投資費用に対するリターンの大きさは低下する可能性が高いでしょう。

また、2020年度から地域活用要件が設けられていた小規模事業用太陽光発電に関して、調達価格等算定委員会では「現行の地域活用要件を維持して様子を見ることとしてはどうか」といった意見が挙がりました。

前述の通り、地域活用要件は最低30%の自家消費と、災害時に活用するための設備投資が求められます。

ヒアリングから推計された値では、設備投資として1kWあたり2,820円ほど必要となる計算です。

このように地域活用要件に対して導入コストがかかることから、2021年度も2020年度同様、50kW以上250kW未満の非入札対象で決定された調達価格に+1円される見込みです。

出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について」

以上のポイントから、小規模事業用太陽光発電は投資目的による運用に適しているとはいえず、自家消費や非常電源として地域活用ができる点に魅力を見出した場合の候補となります。

3.投資目的なら2021年度以降はファンドを要検討

2021年度以降、リターンを得るために太陽光発電への投資を検討しているなら、投資先として太陽光発電ファンドが候補に挙がります。

太陽光発電ファンドとは、複数の出資者を募って資金を集め、太陽光発電事業に事業投資をする金融商品です。

集まった多額の投資資金を使って事業投資をするため、地域活用要件の対象となる10~50kWの太陽光発電設備ではなく、全量買取の対象となる50kW以上の太陽光発電設備に投資ができます。

そのため、投資の観点からいえば、太陽光発電ファンドは以下の点で優れています。

  • 2021年度以降も、全量買取の事業用太陽光発電に投資できる
  • 災害時の活用が義務化されていない事業用太陽光発電に投資できる

このほか最低投資費用の低さや、出資者本人は設備管理を行う必要がないなど、複数のメリットがあります。

太陽光発電ファンドの仕組みや利回り、リスクなどの詳細は以下の記事で解説しています。太陽光発電への投資を検討している場合、ぜひ本記事とあわせてご参照ください。

4.まとめ

2021年度以降の太陽光発電について、現段階で想定される情報をまとめました。

  • 設置コストは2020年度と比べてほぼ変わらない
  • 電力の買取価格は2020年度より低下する見込み
  • 小規模事業用太陽光発電の地域活用要件は継続
  • 早い場合、2022年度から廃棄等費用の積立が義務化

投資対効果は2020年度と同等、あるいは2020年度よりやや劣る可能性があり、投資を目的とするなら小規模事業用太陽光発電は理想的な選択とはいえません。


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