固定価格買取制度とは?投資家が知っておきたい基礎知識を解説【2020年版】

 

この記事の目次

固定買取制度

2012年7月に固定価格買取制度(FIT制度)が始まって8年が経過しました。

FIT制度を抜本的に見直し、FIP制度(Feed in Premium)への移行が予定されている今、改めて固定価格買取制度の基礎知識について解説します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • 固定価格買取制度は再生可能エネルギーの普及を促進させるための制度
  • 固定価格買取制度は賦課金によってまかなわれている

1.固定価格買取制度ってなに?

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度で、2012年7月にスタートしました。

固定価格買取制度(Feed In Tariff)のことを FIT制度と呼びます。

再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法へと改正

固定価格買取制度の根拠法は「再エネ特措法(通称FIT法)」と呼ばれる「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」ですが、2020年2月25日に閣議決定され、2022年4月に施行予定の「エネルギー供給強靭化法案」によって題名が「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」へと改正される予定です。

背景には、頻発する自然災害や、火力発電燃料を海外からの輸入に頼る地政学的リスク、2018年7月の「第5次エネルギー基本計画」で明示された「再エネの主力電源化」があります。

FIT法の改正では、固定価格買取制度(FIT制度)に加え、新たに、市場連動型の導入支援として、市場価格に一定のプレミアムを上乗せして交付する制度(FIP制度)が創設されます。

また、これまで一律にFIT制度で支えてきた再生可能エネルギー電源を、競争電源と地域活用電源に大別し、事業用太陽光と風力は競争電源として、FIP(Feed in Premium)に移行される予定です。

1-1.固定価格買取制度はどうしてはじまったのか?

近年、新興国を中心としたエネルギー需要の急増に伴う国際的な資源獲得競争が激化してきています。

また、国内外における地球温暖化対策の強化が求められる状況の中、純国産のエネルギー源であり、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーの果たす役割の重要性が高まっています。

コストダウンへの期待

再生可能エネルギーを用いる発電投資への投資回収の不確実性を低減させることができれば、再生可能エネルギーに対する投資を促すことができます。

また、再生可能エネルギーの導入拡大が加速すれば、設備の量産化が進み、他のエネルギーに比して割高な再生可能エネルギーのコストダウンも期待できます。

再生可能エネルギーの普及を支える制度として固定買取制度が日本にも導入されましたが、固定価格買取制度の導入は、東日本大震災以前から検討されており、「エネルギー基本計画」や「新成長戦略」においても、言及がなされていました。

2011年3月11日に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」案が閣議決定され、東日本大震災及び福島第一原子力発電所における事故を経て、再生可能エネルギーの導入拡大の観点から修正がなされました。

この修正を反映した形で、同年8月26日に法案が成立し、同年8月30日に公布され、2012年7月1日から固定買取制度が始まりました。

1-2.対象となる再生可能エネルギー

「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つのいずれかを使い、国が定める要件を満たす事業計画を策定し、その計画に基づいて新たに発電を始められるものが対象です。

発電した電気は全量が買取対象になりますが、住宅の屋根に載せるような10kW未満の太陽光の場合は、自分で消費した後の余剰分が買取対象となります。

2.固定買取制度の仕組み

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。

電力会社が買い取る費用の一部を電気の利用者から賦課金という形で集め、再生可能エネルギーの導入を支えています。

固定買取制度の仕組み

2-1.再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)とは?

固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギー電気の買い取りに要した費用は、電気の使用者から広く集められる再エネ賦課金によってまかなわれます。

再生可能エネルギーで発電された電気は、日々使う電気の一部として供給されているため、再エネ賦課金は、毎月の電気料金とあわせて請求されています。

2-2.調達価格・調達期間について

調達価格や調達期間は、各電源ごとに、事業が効率的に行われた場合、通常必要となるコストを基礎に適正な利潤などを勘案して定められます。

具体的には、中立的な調達価格等算定委員会の意見を尊重し、経済産業大臣が決定します。

2020年度以降の価格表(1kWh当たり)

太陽光
  250kW以上
(入札制度適用区分)
50kW以上
250kW未満
10kW以上
50kW未満(※1)
2019年度(参考) 500kW以上
入札制度により決定
250kW以上
500kW未満
14円+税
14円+税
2020年度 入札制度により決定 12円+税 13円+税
2021年度
調達期間 20年間

  10kW未満
出力制御対応機器設置義務なし 出力制御対応機器設置義務あり
2019年度(参考) 24円 26円
2020年度 21円
2021年度
調達期間 10年間

※1 自家消費型の地域活用要件あり。ただし、営農型太陽光発電は、10年間の農地転用許可が認められ得る案件は、自家消費を行わない案件であっても、災害時の活用が可能であれ ばFIT制度の認定対象とする。

風力
  陸上風力 陸上風力
(リプレイス)
着床式洋上風力 浮体式洋上風力
2019年度(参考) 19円+税 16円+税 36円+税 36円+税
2020年度 18円+税 16円+税 入札制度により決定
2021年度
調達期間 20年間
水力
  5000kW以上
30000kW未満
1000kW以上
5000kW未満
200kW以上
1000kW未満
200kW未満
2019年度(参考) 20円+税 27円+税 29円+税 34円+税
2020年度
2021年度
調達期間 20年間
水力(既設導水路活用型)※2
  5000kW以上
30000kW未満
1000kW以上
5000kW未満
200kW以上
1000kW未満
200kW未満
2019年度(参考) 12円+税 15円+税 21円+税 25円+税
2020年度
2021年度
調達期間 20年間

※2 既に設置している導水路を活用して、電気設備と水圧鉄管を更新するもの。

地熱
  15000kW以上 リプレース
15000kW以上
全設備更新型
15000kW以上
地下設備流用型
2019年度(参考) 26円+税 20円+税 12円+税
2020年度
2021年度
調達期間 15年間

  15000kW未満 リプレース
15000kW未満
全設備更新型
15000kW未満
地下設備流用型
2019年度(参考) 40円+税 30円+税 19円+税
2020年度
2021年度
調達期間 15年間

バイオマス
※5 メタン発酵ガス
(バイオマス由来)
間伐材等由来の木質バイオマス
2000kW以上 2000kW未満
2019年度(参考) 39円+税 32円+税 40円+税
2020年度
2021年度
調達期間 20年間

※5 一般木質バイオマス・農作物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料 農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料 (入札制度適用区分) 建設資材廃棄物 廃棄物・その他のバイオマス
10000kW以上
(入札制度適用区分)
10000kW未満
2019年度(参考) 入札制度により決定 24円+税 入札制度により決定 13円+税 17円+税
2020年度
2021年度
調達期間 20年間

バイオマスの例
【メタン発酵ガス(バイオマス由来)】下水汚泥・家畜糞尿・食品残さ由来のメタンガス
【間伐材等由来の木質バイオマス】間伐材、主伐材※3
【一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料】製材端材、輸入材※3、剪定枝※4、パーム椰子殻、パームトランク
【農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料】パーム油
【建設資材廃棄物】建設資材廃棄物(リサイクル木材)、その他木材
【廃棄物・その他のバイオマス】剪定枝※4・木くず、紙、食品残さ、廃食用油、黒液
※3 「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(林野庁)に基づく由来の証明のないものについては、建設資材廃棄物として取り扱う。
※4 一般廃棄物に該当せず、「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(林野庁)に基づく由来の証明が可能な剪定枝については、一般木質バイオマスとして取り扱う。
※5 新規燃料については、食料競合について調達価格等算定委員会とは別の場において専門的・技術的な検討を行った上で、その判断のための基準を策定し、当該基準に照らして、食料競合への懸念が認められる燃料については、そのおそれがないことが確認されるまでの間は、FIT制度の対象としない。食料競合への懸念が認められない燃料については、ライフサイクルGHG排出量の論点を調達価格等算定委員会とは別の場において専門的・技術的な検討を継続した上で、ライフサイクルGHG排出量を含めた持続可能性基準を満たしたものは、FIT制度の 対象とする。なお、既に買取りの対象となっている燃料についても、本委員会とは別の場において、ライフサイクルGHG排出量の論点について専門的・技術的な検討を行う。主産物・副産物を原料とするメタン発酵バイオガス発電については、一般木材等の区分において取り扱う。石炭(ごみ処理焼却施設で混焼されるコークス以外)との混焼を行うものは、2019年度(廃棄物その他バイオマスは2021年度)からFIT制度の新規認定対象とならない。また、2018年度以前(廃棄物その他バイオマスは2020年度以前)に既に認定を受けた案件が容量市場の適用を受ける場合はFIT制度の対象から外す。

経済産業省 資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー

3.まとめ

日本において2012年7月から始まったFIT制度は、再生可能エネルギー導入初期における普及拡大と、それを通じたコストダウンを実現することを目的とする制度です。

この制度により、再生可能エネルギー発電の普及による環境問題への対処や、石油資源に対する代替エネルギーの確保、そして量産効果による価格の低下が実現しました。

市場競争力が育ってきた電源については、FITで支援する必要性が薄れてきたといえます。

今後は、FIP制度に移行し、更なる市場競争力を促進していくことが期待されます。


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