太陽光発電投資はどのような仕組みで売電収入を得られるの?【2020年版】

 

この記事の目次

環境保全の観点だけでなく、投資対象としても注目される太陽光発電は、FIT制度により安定して売電収入を得られる事業として急速に普及しました。

しかし、太陽光発電投資にまつわる取り決めは2020年度から変更されており、特に投資を目的として設備購入を検討している場合は注意が必要です。

ここでは、太陽光発電投資の仕組みについて解説しつつ、2020年度以降はFIT制度の仕組みがどのように変わっていくのか解説します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • FIT制度は、個人規模の投資に不利な条件へ変更
  • 太陽光発電ファンドを要検討

1.太陽光発電投資における売電の仕組み

家屋の屋根や空き地に設置された太陽光発電設備は、太陽光パネルやパワーコンディショナと呼ばれる設備の働きにより電力を生み出します。

生み出された電気は送電線を通じて電力会社に送られ、その電気を電力会社が買い取ることで事業者にお金が支払われます。

これが太陽光発電投資における利益獲得の仕組みです。

実物資産を保有し、定期収入を得られる点で不動産投資と比較されがちであるものの、太陽光発電投資は入居者不在による「空室リスク」がなく、天候さえ良ければ安定的に稼働する部分に強みがあります。

また、太陽光発電投資は上記の構造に加え、電力を一定価格で売却できるFIT制度(固定価格買取制度)の存在により、高い利回りを実現させられる投資として知られていました。

1-1.FIT制度(固定価格買取制度)とは

FIT制度(固定価格買取制度)は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーにより創出された電力を、電力会社が規定された価格で一定期間にわたり買い取る制度です。

再生可能エネルギーを普及させて、国内のエネルギー自給率を高める目的で導入された本制度は、発電設備への投資額回収を助ける役割を持っており、再生可能エネルギーの利用に力を入れている発電事業者にとって大きな支えとなっています。

なかでも太陽光発電は、FIT制度の登場により利回りの高い投資商品として注目され、以下の画像から分かるように制度が始まった2012年(住宅用太陽光発電の買取制度は2009年スタート)から急速に普及しています。

出所:資源エネルギー庁「平成30年度(2018年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」

太陽光発電の導入量を世界第3位(2017年実績)に引き上げる役割を担ったFIT制度は、発電出力によって区別される「住宅用太陽光発電」と「事業用太陽光発電」に応じて、それぞれ適用内容が異なります。

  住宅用太陽光発電 事業用太陽光発電
発電出力 10kW未満 10kW以上
主な設置場所 家屋の屋根 空き地や工場の屋根
調達期間(FIT適用期間) 10年間 20年間
電力買取価格(2020年度) 21円 10kW以上50kW未満:13円+税
50kW以上250kW未満:12円+税
250kW以上:入札制度により決定

それぞれ、上記を踏まえて住宅用・事業用太陽光発電の売電単価と仕組みをご説明します。

1-2.住宅用太陽光発電の売電価格・仕組み

家屋の屋根に取り付けられることの多い、発電出力が10kW未満の太陽光発電設備は住宅用太陽光発電に分類され、FIT制度による固定価格の電力買取が10年のあいだ行われます。

2020年度の電力買取価格は1kWhにつき21円。

発電した電力は自宅で利用し、それでも使い切れなかった余剰電力を売却する「余剰買取」の体制が取られます。

2009年に買取制度の適用がスタートされた住宅用太陽光発電は、2019年にFIT制度の適用期間である10年を終えており、これを「FITを卒業する」といったニュアンスを込めて卒FITと呼びます。

卒FITを迎えた発電設備は以下のような活用方法が選択されており、今後FIT制度の適用期間を終える太陽光発電設備の活用のあり方における指針として注目されることとなりました。

自家消費をするため蓄電池を導入する
卒FIT向けの売電プランに移行する

発電した電力を自家消費に充てることで電気代を節約したり、引き続き売電をするため卒FIT向けの売電プランに移行したりといった選択肢が一般的です。

きちんと出口戦略が存在するため、日々の電気代を抑えつつ副収入を得られるモデルとして、住宅用太陽光発電は依然有力な選択肢の1つだといえます。

1-3.事業用太陽光発電の売電価格・仕組み

空き地や工場の屋根に取り付けられることの多い、発電出力が10kW以上の太陽光発電設備は事業用太陽光発電に分類され、FIT制度による固定価格の電力買取が20年のあいだ行われます。

発電出力に応じて電力の買取価格は異なり、10kW以上50kW未満であれば1kWhあたり13円+税、50kW以上250kW未満であれば1kWhあたり12円+税、それ以上の発電設備は入札制度により買取価格が決定されます。

また、以前は発電した全電力を売却できる「全量買取」を選択できましたが、2020年度以降は10kW以上50kW未満(低圧)の太陽光発電設備に地域活用要件が設けられることになり、以下の赤枠内に記載されている条件に則らなければなりません。

出所:資源エネルギー庁「中間取りまとめ(案)補足事項」

この変更により50kW未満の太陽光発電設備は、発電した電気の30%以上を自家消費しなければならず、災害時に活用できるよう蓄電池・自立運転機能(パワーコンディショナより直接電源を取る機能)を備える必要があります。

全量買取が選べず、従来は不要であった設備投資が必須化された都合上、2019年までにFIT制度の認定を受けた設備に比べて投資対効果は低下。

2020年度以降にFITの認定を受けた新しい太陽光発電設備を購入し、個人が投資目的で発電事業を始めることは厳しくなってしまいました。

一部、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)と呼ばれる方式であれば全量買取を選択できるものの、こちらも農業従事者でなければ難しい選択です。

ただし、個人投資家が安定的に売電収入を得るモデルは、完全になくなったわけではありません。

太陽光発電ファンドを通じて行う全量買取の太陽光発電投資であれば、制度改正の影響を受けることなく従来のような堅実な資産形成が期待できます。

2.太陽光発電ファンドの仕組み

出資者から資金を集め、それをまとめて事業に投資し、得られた収入を出資者に還元する仕組みの金融商品をファンドと呼びます。

つまり、太陽光発電ファンドは集まった資金を全量買取の大規模な太陽光発電設備に投資し、個人が少額から間接的に発電事業の運用に関われる商品なのです。

弊社が提供する『ソライチファンド』も、このような仕組みにより50万円から太陽光発電に投資することを可能としています。

なお、太陽光発電ファンドは提供元によって仕組み(運用の流れ)が異なるため、ここではソライチファンドを例にしてご説明します。

太陽光発電ファンドの仕組み(運用の流れ)
  1. 出資者(投資家)が営業者(合同会社)に出資
  2. 出資金をもちいて営業者が太陽光発電設備に投資
  3. 営業者が太陽光発電設備をオペレーターに賃貸
  4. オペレーターの運用のもと、発電された電力は電力会社に売却
  5. 売電量に応じて、オペレーターは売電収入を獲得
  6. オペレーターが営業者に対して、賃借料を支払い
  7. 運営費用と内部留保を差し引いて出資者に分配

太陽光発電投資であれば、発電設備を購入したあとの運用業務も自ら行う必要がある一方、太陽光発電ファンドは出資以外の手間が発生しません。このほか、具体的に両者にどのような違いがあるのかご説明します。

2-1.太陽光発電投資と太陽光発電ファンドを比較解説

太陽光発電投資と太陽光発電ファンドは、一概にどちらの方が投資対象として優れているのか断言できるものではありません。それぞれにメリットとデメリットがあるためです。

それでは、個人規模で投資をする場合に選ばれる10kW以上50kW未満の太陽光発電投資、および太陽光発電ファンドの違いについてご説明します。

なお、太陽光発電ファンドは提供元によって申込単位(最低費用)や運用期間が異なるため、ここではソライチファンドを例にしてご説明します。

  太陽光発電投資 ソライチファンド
初期費用 1000万円~2000万円程度 1口50万円
運用期間 FIT制度の適用期間は20年間 最大20年間
運用業務 事業者自身で委託者を手配 出資者にかかる手間はない
専門知識 事業者(経営者)であるため必要 出資者であるため不要
中途撤退 中古市場で設備を売却できる 原則として中途解約は不可能
融資の利用 金融機関の融資を利用できる 融資は受けられない
出口戦略(20年目以降) 出口戦略を考えなければならない 出口戦略を考えなくても良い

太陽光発電投資とソライチファンド(太陽光発電ファンド)を比較した際、大きく異なる点は初期費用の規模感です。

低圧物件と呼ばれる比較的小さな事業用の発電設備であっても、相場価格は1,000万~2,000万円程度となっており、個人が自己資金の範囲で投資を始めることは極めて困難です。

そのため、銀行や信販会社といった機関から資金を借り入れて、借金をした状態から発電事業を行うケースも多くあります。

一方、ソライチファンドは初期費用の最低ラインが50万円となっており、出資者の自己資金にあわせた自由度の高い投資が可能です。

また、専門家を手配してメンテナンスや管理業務を行ってもらう必要がなく、ファンドに出資したあとは運用に手間がかかりません。

基本的に中途解約ができず、融資を利用した多額の投資ができないといった短所はあるものの、実物資産を持たないため出口戦略を考える必要がない手軽さは個人投資家にとって魅力的です。

なお、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は、全量買取の廃止と災害時に活用するための設備投資が必要となったことから、2019年以前ほどの高い利回りは期待できません。

そのため、一概に太陽光発電投資と太陽光発電ファンドは「どちらが高利回りである」と断言できなくなったため、投資前における収益性の計算はそれぞれの案件を見たうえで行うことを推奨します。

3.まとめ

太陽光発電投資は、環境保全と高い利回りを両立できる事業として普及したものの、2020年度の条件変更により一概に「リターンの大きい投資である」とはいえない状況となりました。

再生可能エネルギーをもちいて、日本のエネルギー自給率アップに貢献できる点では大変意義のある取り組みですが、収益性について考慮するなら慎重に判断を下すべきでしょう。

中長期運用を前提とした投資であれば、収支予想を立てやすい太陽光発電ファンドも検討してみてはいかがでしょうか。


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