本当に必要?種類別に再生可能エネルギーの特徴を解説

 

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日本は、再生可能エネルギーを使った発電方式の普及拡大を推し進めています。

特定の発電方式に電力供給を依存しないよう、政府がエネルギーミックス(さまざまな発電方式による電力供給)の実現を目指しているからです。

ここでは、再生可能エネルギーの種類と特徴、日本における「再生可能エネルギーの必要性」についてご説明します。再生可能エネルギーには、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか確認していきましょう。

1.再生可能エネルギーとは?

再生可能エネルギーは、太陽光・風力・水力といった地球上からなくなることのない永久的に利用できるエネルギーのことです。

再生可能エネルギーには、つぎの特徴があります。

  • 化石燃料とは異なり枯渇しない
  • 発電時に温室効果ガスを排出しない
  • バイオマス燃料を除き、燃料の調達が不要

それぞれ、具体的に解説していきます。

1-1.化石燃料とは異なり枯渇しない

日本の主要電源として長年活用されている火力発電とは異なり、再生可能エネルギーを用いた発電は燃料として有限の資源を使いません。

2018年度を基準とした場合、化石燃料の可採年数は石油や天然ガスが約50年、石炭が132年だと考えられており、やがて化石燃料は尽きてしまうと推定されています。

持続可能な発電体制を実現するためには、有限の資源を燃料としない発電設備が不可欠であるため、再生可能エネルギーを用いた発電の普及拡大が急がれているのです。

1-2.発電時に温室効果ガスを排出しない

再生可能エネルギーを用いた発電は、発電時に温室効果ガスを排出しません。一方、火力発電に用いる化石燃料は、燃焼時に温室効果ガスを排出します。

温室効果ガスは地球温暖化を招き、異常気象や大気汚染、海洋の酸性化など深刻な環境問題を引き起こす原因です。

そのため、発電時に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは、地球環境を健全に保ちつつ発電を行ううえで重要なカギとなるのです。

なお、バイオマス発電のみ発電時に二酸化炭素が発生しますが、燃料として使われる木質バイオマスはもともと樹木です。

樹木は光合成によって二酸化炭素を吸収しているため、燃料として利用したときに発生する二酸化炭素の排出量と相殺し、実質的な排出量はゼロになるものとして考えます。

1-3.バイオマス燃料を除き、燃料の調達が不要

太陽光や風力、水力、地熱など、バイオマス燃料を除く再生可能エネルギーは燃料の調達が不要です。

基本的には、エネルギーが自動的に供給される場所に発電設備を設置するため、燃料の運搬・管理の手間も発生しません。

また、燃料調達を国外からの輸入に頼る火力発電とは異なり、エネルギーを自給自足できる点も再生可能エネルギーを用いた発電のメリットです。

2.再生可能エネルギーの種類と特徴

化石燃料のデメリットをカバーできる再生可能エネルギーは、いくつかの種類があります。

ここでは、再生可能エネルギーの種類とそれぞれの特徴についてご説明します。

2-1.太陽光発電

太陽光発電は、太陽光パネルに受けた太陽光を電力に変換する発電方式。

家屋の屋根に設置する住宅用太陽光発電と、空き地・工場の屋根に設置する事業用太陽光発電があり、再生可能エネルギーを用いた発電のなかでは、水力発電に次いで発電量の割合が大きい発電方式です(2019年時点)

種類 概要
住宅用太陽光発電 家屋の屋根に設置する10kW未満の発電設備
事業用太陽光発電 空き地、工場の屋根に設置する10kW以上の発電設備

上記はいずれもFIT制度(固定価格買取制度)の対象となり、制度で定められた期間、発電した電力を一定価格で電力会社に買い取ってもらえます。

FIT制度によって安定的な売電収入を得られることから、制度開始以降は投資を目的として個人が運用するケースも増えました。

また、住宅用太陽光発電は停電時の非常電源として活用できるため、自宅の災害対策としても注目されています。

このほか、太陽光発電の主なメリット・デメリットは以下の通りです。

項目 主な特徴
太陽光発電のメリット 太陽光さえ当たれば、どこでも発電できる
太陽光発電のデメリット 発電効率が20%と低く、発電量は気候に左右される

2-2.風力発電

風力発電は、風を受けたブレード(羽根)が回転することで電力をつくる発電方式。

風を回転エネルギーに変換するブレードと、発電設備に内蔵された増速機・発電機によって電力が生み出されます。

  • ブレード:風を受けて回転エネルギーを生み出す
  • 増速機:回転のスピードを加速させる
  • 発電機:回転エネルギーを電力に変換して発電

発電効率は20~40%程度であり、再生可能エネルギーのなかでは水力発電に次いで優れた効率性を誇ります。

また、陸上だけでなく洋上(海・湖など)にも設置が可能であり、一定以上の風さえあれば発電が可能です。

項目 主な特徴
風力発電のメリット 陸上・洋上を問わず設置できる
風力発電のデメリット 発電量が気候に左右される

2-3.水力発電

水力発電は、高所から低所に水が流れる力を利用する発電方式。河川や湖の近くに建設されることが多く、発電設備の種類は4つに大別されます。

種類 概要
流れ込み式 河川の流れをそのまま利用して発電する方式
調整池式 小規模なダムにより河川の流れをせき止め、電力需要に応じて放水しつつ発電する方式
貯水池式 大規模なダムにより河川の流れをせき止め、電力需要が高まる夏・冬に放水しつつ発電する方式
揚水式 河川の上部・下部にダムを設置し、電力需要の少ない夜間に下部ダムから上部ダムに水をくみ上げ、昼間に放水して発電する方式

水力発電は発電効率が80%程度と高く、再生可能エネルギーを含む全発電方式のなかで随一の水準を誇ります。

このほか、水力発電の主なメリット・デメリットは以下の通りです。

項目 主な特徴
水力発電のメリット 発電効率が80%と高い
水力発電のデメリット 河川や湖の近くなど、設置できる場所が限定的

2-4.地熱発電

地熱発電は、マグマの熱により高温となった蒸気を使い、タービンを回すことで電力をつくる発電方式。

地熱発電の種類は「フラッシュ方式」と「バイナリ方式」の2つに分かれており、それぞれ以下の特徴を持っています。

種類 概要
フラッシュ方式 200℃以上の熱水をくみ上げ、熱水から取り出した蒸気によりタービンを回す方式
バイナリ方式 100℃程度の熱水をくみ上げ、熱水の温度より沸点の低い媒体(低沸点媒体)から発生した蒸気によりタービンを回す方式

太陽光発電や風力発電のように、発電量が気候に影響されることはなく、地熱発電は1年を通じて安定的に再生可能エネルギーによる発電が可能です。

このほか、地熱発電の主なメリット・デメリットは以下の通りです。

項目 主な特徴
地熱発電のメリット 発電量が気候・季節により左右されない
地熱発電のデメリット 発電効率が10~20%程度と低い

2-5.バイオマス発電

バイオマス発電は、動物・植物から生成された資源を用いる発電方式。生物資源であるバイオマス燃料を燃焼、あるいはガス化させることでタービンを回し、発電機を稼働させて発電します。

種類 概要
石炭との混焼による発電 火力発電所を流用し、石炭とバイオマス燃料を粉砕・混焼して発電機を稼働させる方式
バイオマス燃料の専焼による発電 バイオマス燃料のみを燃やし、発生した水蒸気によって発電機を稼働させる方式
熱分解ガス化による発電 ガス炉に入れたバイオマスから発生する可燃性ガスを利用し、発電機を稼働させる方式
メタン発酵による発電 「嫌気性発酵」と呼ばれる微生物の働きを利用し、発生したメタンによって発電機を稼働させる方式

バイオマス発電は上記の4種類に大別されています。また以下の資料のように、発電時に発生した熱を利用し、エネルギー変換率を高めるケースもあります。

出典:資源エネルギー庁「持続可能な木質バイオマス発電について」

このほか、バイオマス発電の主なメリット・デメリットは以下の通りです。

項目 主な特徴
バイオマス発電のメリット 発電量が天候・季節に左右されない
バイオマス発電のデメリット 燃料の調達・運搬・管理が必要

3.再生可能エネルギーは本当に必要?

再生可能エネルギーによる発電の普及拡大は急がれていますが、日本にとって必要な存在なのでしょうか?

ここでは、再生可能エネルギーによる発電が、なぜ日本にとって必要なのか解説していきます。

3-1.原子力発電所の停止により火力発電に依存

2010年頃まで、日本の電力供給の20~30%程度を担っていた原子力発電所は、東北地方太平洋沖地震により起こった津波に起因する「福島第一原子力発電所事故」のあと、その多くが安全性の問題を問われて稼働を停止しました。

震災が起こった2011年以降、原子力発電による電力量の割合は1桁台となっており、電力量の低下分を火力発電が補っています。

結果、多量の温室効果ガスを排出する火力発電に、電力供給を依存することとなりました。

出典:エネ百科「電源別発受電電力量の推移」

火力発電に依存する状況は、温室効果ガス排出やエネルギー自給率の観点から好ましくないため、温室効果ガスを排出せずエネルギーの国内調達が可能である「再生可能エネルギーによる発電」の普及拡大が必要とされているのです。

3-2.2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロへ

2020年10月、菅首相は「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」といった方針を発表しました。

温室効果ガス排出量を実質ゼロにするためには、日本の主要電源である火力発電への依存度を下げ、再生可能エネルギー発電や原子力発電による発電の割合を高めなければなりません。

ただし前章でも触れた通り、原子力発電は安全面に対する懸念から稼働を停止しており、本格稼働の見通しは立っていません。

原子力発電の稼働再開が難航するほど、再生可能エネルギーを用いた発電の必要性は高まるため、これも早急な普及拡大が求められる一因だと考えられます。

3-3.世界規模で温室効果ガス削減を目指すパリ協定

2020年度以降の、世界的な地球温暖化の枠組みが「パリ協定」です。パリ協定では、世界全体の目標として2つの指標を掲げており、これを達成するための一要素として再生可能エネルギーの普及は欠かせません。

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して2℃より低く保ち、1.5℃におさえる
  • 温室効果ガス排出量を頭打ちさせ、21世紀後半は排出・吸収量のバランスをとる

上記を世界全体の目標における基準として、パリ協定の参加国はそれぞれ温室効果ガスの削減目標を提出しています。

日本は「温室効果ガスを2030年度に26%削減(2013年度比)」を目標として掲げてきたものの、前述した「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という新たな目標を達成するためには、2030年度の削減目標を引き上げなければならない可能性があります。

菅首相の表明を受けて、2030年の再生可能エネルギー比率を50%にすべきといった提言もあり、今後は日本におけるパリ協定の目標設定に積極的な変更が見られるはずです。

4.少額から再生可能エネルギーの普及に貢献する方法

ここまでご紹介した再生可能エネルギーによる発電方式の多くは、発電設備を建築するために数億円規模の費用を要します。

しかし、なかには少額から再生可能エネルギーの普及に貢献する方法もあります。

ここでは、再生可能エネルギーの普及に貢献する方法のうち、個人でも取り組める2つの選択肢をご紹介します。

4-1.住宅用太陽光発電

住宅用太陽光発電は、家屋の屋根に設置されることが多い10kW未満の太陽光発電設備です。住宅用太陽光発電は、家屋の屋根に設置されることが多い10kW未満の太陽光発電設備です。

3~9kWの太陽光発電設備であれば、設置費用はおおむね100万~300万円ほど。FIT制度の認定を受けることで、太陽光パネルで発電した電気を自宅で使いつつ、余った電力は電力会社に売却できます。

住宅用太陽光発電の導入は、少額から再生可能エネルギーの普及に貢献し、経済的なメリットも得られる現実的な方法の1つです。

4-2.太陽光発電ファンド

太陽光発電ファンドは、太陽光発電事業の出資者の1人となり、再生可能エネルギーの普及に貢献できる金融商品。

弊社が提供する『ソライチファンド』も、数ある太陽光発電ファンドの1つです。

ソライチファンドの場合は最低出資額が1口50万円に設定されており、住宅用太陽光発電よりも少額から太陽光発電事業に携われます。

実際の設備運用は専門家に任せつつ、太陽光発電事業にかかわって事業収入を得られるため、環境保全と資産形成を両立できる点が特徴です。

5.まとめ

今回は、今後の日本の電力供給を支える再生可能エネルギーの種類、それぞれの特徴についてご紹介しました。

私たちが普段見かける発電設備は、やみくもに建設されているわけではなく、エネルギーミックスの実現を目的として建設されているのです。

また、再生可能エネルギーは私たちに直接関係のない存在に思えますが、実際には住宅用太陽光発電や太陽光発電ファンドのように、個人でも再生可能エネルギーの普及に貢献する手段はあります。

より良い日本をつくっていくための選択として、ぜひ再生可能エネルギーへの投資を検討してみてください。


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