ファンドに対する匿名組合出資は「副業」にあたるのか?【弁護士が解説】

 

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多くの会社では、就業規則等において副業禁止規定が定められています。このため、会社員や公務員の方がGK-TKスキームのファンドに対して匿名組合出資をする際には、これが副業にあたるのかが気になるところです。そこで、一般的に副業禁止規定に抵触するのはどのような場合か、ファンドに対する匿名組合出資が副業禁止規定に抵触するのかなどについて解説します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • 副業禁止の根拠は、民間企業の場合は就業規則等の社内規程であるが、公務員の場合には法律で定められている
  • 民間企業でも公務員でも匿名組合出資は副業禁止規定に抵触しない
  • 匿名組合出資により得られる配当は雑所得として課税対象となる

1.副業禁止規定とは

副業禁止規定とは、会社が雇用関係にある従業員に対して、その会社の業務以外の仕事に従事することを禁止する就業規則等の規定をいいます。そもそも、副業禁止規定とはどのようなものであるか具体的に説明します。

1-1.副業禁止の根拠

副業禁止に関しては、会社員と公務員とで根拠が異なります。会社員の場合には、副業を禁止する法律があるわけではなく、あくまでも各企業が独自の判断により社内規程である就業規則等において副業禁止を定めています。副業禁止規定に抵触した場合には、懲戒処分の対象となることがあります。

企業によっては、そもそも副業禁止を定めていないことがあります。この場合には、副業は許容されており、副業を理由として懲戒処分がされることはありません。ただし、副業が原因で本業の会社の機密情報がライバル会社に漏洩した場合や副業に力を入れるあまり本業で無断欠勤が続くような場合には、副業禁止規定とは別の理由によって懲戒処分の対象となる可能性はもちろんあります。

他方、公務員の場合には法律によって副業(兼業)が禁止されています。国家公務員の場合には国家公務員法が、地方公務員の場合には地方公務員法がそれぞれ副業禁止の根拠となります。

1-2.副業禁止規定の趣旨

一般的に副業禁止規定が定められる趣旨として挙げられるのは、以下の点です。

  • 本業の職務に専念して欲しい
  • 副業と本業との利益相反のおそれ
  • 本業の情報が漏洩するおそれ

民間企業が副業禁止規定を設ける最大の理由は、本業の職務に専念してもらいたいということと考えられます。本業の終業時刻後や休日に副業をするのであれば本業に差し支えないから問題がないのではないかと思われるかもしれません。しかし、副業を深夜まで行っていたりすると睡眠不足により翌日の本業におけるパフォーマンスが低下する懸念があります。

また、副業と本業の利益相反に関しては、副業として同業他社の業務に従事する場合、特に問題となります。利益相反は情報漏洩のおそれと同時に問題となることが多く、例えば本業のライバル会社の業務に副業として従事する場合には、本業の会社にとって事業上重要な技術情報や顧客情報などが持ち出される可能性が否定できません。

利益相反と情報漏洩に関しては、単に他の会社と雇用契約を締結して従業員として副業をする場合だけでなく、本業と競合する事業を営む会社を自ら設立し経営するような場合にも同様の懸念があります。

なお、公務員の場合には副業(兼業)を禁止する理由が法定されており、具体的には以下のとおりです。

  • 公務員の信用失墜行為の禁止
  • 守秘義務
  • 職務専念義務

守秘義務と職務専念義務は民間企業の場合と同様です。また、公務員は公益的立場にあるため、民間企業の業務に従事していることが国民や市民から公平性を害するとみられるリスクもあります。このため、公務員については信用失墜行為を禁止するために副業(兼業)が規制される点が特徴的です。

1-3.副業禁止の範囲

特に民間企業の場合に問題となりがちですが、就業規則に副業禁止規定が設けられている場合にすべての副業が懲戒処分の対象となるわけではありません。なぜなら、日本国憲法には職業選択の自由が定められているため、これを不当に制約するような過度の副業禁止規定は無効であると考えられているからです。

実際に副業禁止規定への抵触に基づく懲戒処分の有効性についてはいくつか裁判例が公表されていますが、副業禁止規定に形式的に抵触したからといって懲戒処分が有効と判断されているわけではありません。裁判所は、副業禁止の趣旨に照らして、本業の職場秩序や労務の提供に支障が生じるか、副業を行ったのが本業の就業時間内か、などといった具体的な事実関係に照らして実質的に懲戒処分とすることが妥当であるかを判断しています。

なお、公務員の副業禁止の範囲は国家公務員法又は地方公務員法により明確に定められています。具体的には以下のとおりです。

職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

国家公務員法第103条第1項

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。

地方公務員法第38条

公務員の副業(兼業)禁止に関しては、各条文をみればわかるように会社を経営することや会社の役員等に就任することを禁止する内容となっています。

2.匿名組合出資は副業にあたらない

GK-TKスキームのファンドに投資をする場合、投資家は匿名組合出資という形でファンドに対して資金を提供し、出資の割合に応じてファンドの得た収益から配当を受けることになります。結論からいうと、匿名組合出資をしてファンドから配当を受け取ることは副業禁止規定に抵触しないと考えられます。

2-1.匿名組合出資の性質

GK-TKスキームの投資ファンドの場合、投資家は、投資ファンド(SPC)である合同会社(GK)に対して匿名組合(TK)を通じて出資をし、投資ファンドの収益を配当として受領します。GK-TKスキームにおいて投資家は、業務執行には関与せず、出資額の範囲内で有限責任を負うに過ぎません。したがって、GK-TKスキームにおける投資家の立場は株式投資などの資産運用における投資家と同じといえます。

前述のとおり、就業規則において副業禁止規定が設けられているのは、副業によって本業がおろそかになることや、本業との利益相反や情報漏洩が発生するリスクがあるためでした。しかし、GK-TKスキームにおける匿名組合出資は、資金を提供する以外に投資家としてすべき業務があるわけではないため本業がおろそかになることは通常あり得ません。

また、匿名組合出資者はファンドに資金を提供し、配当を受け取るだけであり、それを超えて投資ファンドの事業に関与することはありません。したがって、本業で得た情報が投資ファンドに漏洩するようなことは考えられません。このため、匿名組合出資が副業禁止規定に抵触する余地はないといえます。

さらに、GK-TKスキームにおける投資家はファンドの業務執行を行う立場ではないため、国家公務員法や地方公務員法が禁止する兼職にもあたりません。

以上から、会社員と公務員のいずれについても、GK-TKスキームのファンドに匿名組合出資を行うことが副業(兼業)禁止規定に抵触することはないと考えてよいでしょう。

2-2.匿名組合出資による配当は雑所得

GK-TKスキームのファンドに投資をし、ファンドの収益から配当を得た場合には当該配当が課税対象となります。国税庁によれば、匿名組合員である投資家が配当として得る所得に関しては、匿名組合の性質及び当該所得は組合員である投資家が行う出資・投資の対価であるという側面から判断して、原則として雑所得となることとされています(所基通36・37共-21)。

上場株式や投資信託等への投資では、キャピタルゲインに対する譲渡益課税、インカムゲインに対する配当課税のいずれも税率は一律20.315%(復興特別税を含む所得税15.315%、住民税5%)となっています(2020年8月24日時点)。これに対し、匿名組合出資の配当は雑所得となるため、配当に対する税率は所得金額に応じた累進課税となります。金融商品の中では仮想通貨などと同様の税制となっています。

なお、国税庁によれば、匿名組合員である投資家が投資ファンド(SPC)にあたる合同会社(GK)の営む事業に係る重要な業務執行の決定を行っているなど、投資家が組合事業を営業者である合同会社(GK)とともに経営していると認められる場合には、当該匿名組合員である投資家がファンドから得る利益の分配は、営業者の営業の内容に従い、事業所得又はその他の各種所得となります(所基通36・37共-21ただし書き)。

もっとも、一般的な太陽光発電事業に投資するGK-TKスキームのファンドでは、投資家がSPCである合同会社(GK)の事業に係る重要な業務執行の決定を行うことはありません。したがって、配当が事業所得等と評価されることは通常ないといえます。

3.まとめ

重要なのは、GK-TKスキームでは匿名組合出資者である投資家があくまでも資金提供者としての立場のみを有し、業務執行には関与しない仕組みとなっているという点です。したがって、株式投資などの資産運用と同様に副業禁止規定に抵触することは通常考えられません。

ただし、会社によっては副業禁止規定とは別に金融商品への投資自体が禁止されていることがあります。例えば、一部の金融機関や、弁護士、公認会計士、税理士などの士業事務所に在籍する場合には、インサイダー取引等のリスクを避けるため、就業規則等において投資を一律禁止したり事前届出制とするなど一定の制約を設けていることがありますので、投資にあたっては他の社内規程を念のため確認しておくとよいでしょう。


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